内容説明
ユングは語った、これは私の最後の本。無数の錬金術文書の背後に動く錬金術師の魂の秘密、心的過程を探り、錬金術の心理学的意義の全貌を明らかにした唯一の著作。
目次
第4章 王と女王(黄金と霊;王の変容;王の救済―『リプラエウスの古歌』 ほか)
第5章 アダムとエヴァ(アルカヌムとしてのアダム;彫像;最初の達人〔錬金術師〕としてのアダム ほか)
第6章 結合(対立の結合に関する錬金術の見方;結合の諸段階;クゥインタ・エッセンティアの製造 ほか)
感想・レビュー
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roughfractus02
7
キリスト教に分離された霊と身体の統合を錬金術に見る著者だが、本巻では、錬金術師が「復活したキリスト」の身体を最高物質として目標とするのに対し、著者の目標は意識と無意識からなる心のシステムの統合であるという違いも見えてくる。一方、行為と未分割な無意識のSich(es)を一度自我(Ich)に純化・分離し、さらに両者間の潜在的自己(Selbst)へ統合する個性化の過程に、自我を主語とした言葉ではなく、溶解や結合という物質の変容の行程を著者が採用すると、物質的自然に沿う心の理想的なあり方がそこに見えてくるようだ。2021/06/10