内容説明
抑圧的な明治エリートの父親、その父親に痛々しく仕えた母、ご飯や味噌汁のにおいをかぐだけで何の楽しみもなくやつれ死んだ母の哀しみを思い出してしまう主人公。あるいはショコラの香りにつつまれて、パリの雑誌に手をのばしながら正月元旦にいぎたなく朝寝をむさぼる荷風の自画像―作品のそこかしこに見られる作家の意外かつ不思議に豊かな女性性に注目し、独身者として個を貫く生き方にすっかり魅せられた現代女性の熱い思いが横溢した出色の作家論。
目次
米のご飯はハハの敵
一緒にレストランへ
デパートと荷風
百合の花咲くそこは―荷風の少女憧憬
小径、花園、荷風
夏の花、夏の孤独
白薔薇の季節に
朝寝の荷風
灯火繚乱
涙の東京
ネギをさげて、高らかに自由を
薔薇色のエゴイズム―或る荷風ファン
著者等紹介
持田叙子[モチダノブコ]
1959年、東京生まれ。慶応義塾大学大学院修士課程、国学院大学大学院博士課程単位修了。青山学院女子短期大学・国学院大学兼任講師
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