内容説明
「人を殺したかも知れない…」真幌の春の風物詩「浦戸颪」が吹き荒れた翌朝、美波はカノコから電話を受けた。七階の部屋を覗いていた男をモップでベランダから突き落としてしまったのだ。ところが地上には何の痕跡もなかった。翌日、警察が鑑識を連れどやどやとやって来た。なんと、カノコが突き落とした男は、それ以前に殺され、真幌川に捨てられていたのだ。
著者等紹介
倉知淳[クラチジュン]
1962年静岡県生まれ。日大芸術学部演劇科卒。94年『日曜の夜は出たくない』でデビュー。2001年『壷中の天国』で第一回本格ミステリ大賞受賞。ディクスン・カーばりの不可能犯罪を爽やかに描く手法に定評がある
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感想・レビュー
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aquamarine
67
「幻想都市の四季」と題して4人の作家が同じ舞台で中編を一編ずつという企画のようです。倉知さんらしい軽さでサクサクっと読み進められます。ただ、ページ数の関係で余計なものはないだろうという構えからか伏線をたくさん拾ってしまい、おそらくトンデモに近い部類の真相なのにかなり近くまで予測できてしまいました。でも、それでいいのか!的なところが逆に好きです。楽しみました。2016/03/04
ダイ@2019.11.2~一時休止
57
架空都市の話その1。倉知さん篇。それはないわぁと思うがチョット面白いトリックでした。2013/09/21
セウテス
55
架空都市真幌市の四季を、四人の作家さんで織り成す四部作の一作目の春です。倉知淳氏の作品らしい軽い語りでユーモアもある、わりと爽やかなストーリーですが殺人事件です。バラバラ遺体が見つかり、死亡推定時刻はハッキリと出ているのに、それよりも二時間も後に姿を見られている矛盾が起こります。目撃証言が間違っているのか、死亡推定時刻に問題が在るのか。謎としてはたいへん面白い、魅力的なものに感じます。しかしオチとしては、チョットォ!な展開でした。それにしても真幌周辺地図を見ますに、思わずニンマリする事間違い無しです。2015/05/08
sk4
49
架空の都市【まほろ市】の四季を舞台に、倉知淳(春)、我孫子武丸(夏)、麻耶雄嵩(秋)、有栖川有栖(冬)の四人の推理小説作家がそれぞれの季節の殺人にまつわるミステリーを描いた中編アンソロジー。冊子は別々に四冊です。 本作『まほろ市の殺人 春』は、ある殺人死体遺棄事件を軸にした爽やかな青春ミステリー。 「(これ壁本にする人多いんだろうな〜)」なんて思いましたが、アンチフーダニットの聖書『メルカトルかく語りき(麻耶雄嵩)』に感銘を受けた私にはむしろ素晴らしいミステリー作品に感じました。 次は『夏』です!2013/07/01
とも
31
★★★☆まほろ市で四季に繰り広げられる事件を4名の作家が担当したアンソロジー作品。第一作目の「春」を受け持ったのが倉知淳。新進ではあるが結構お気に入りの作家で、彼の作品を読むがために、この作品集を購入したといっても過言でない。まぁ、作品としては中の上くらいのレベルではあったが、彼女が幽霊に痴漢され友人はマンションの7階で覗きをされ突き落としたが消えてしまったという荒唐無稽なストーリーから、最後にはきっちりと伏線を収束させるところは彼らしい作品であった。2018/08/27