内容説明
アメリカが負けた唯一の戦争―ヴェトナム戦争。20世紀の終わり、いまだ負け戦のトラウマを抱えるアメリカ社会の記憶と経験を精緻に描く、会心の書き下ろし。
目次
第1章 歴史と記憶
第2章 戦争の教訓
第3章 犠牲者の神話
第4章 記憶のイコン
第5章 動く記憶
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
4
集合的記憶として、今生成されつつあるヴェトナム戦争に、それを形作る語りや痕跡としての遺物を手がかりにその襞の一つ一つに分け入る、丁寧で誠実な考察がなされている。前著、ジャングル・クルーズにうってつけの日よりさらにクリアカットでコンパクトな印象を受ける。未来への道を作るために過去の断片を拾い集める冷静で内省的な文章は相変わらず魅力的。この本自体がヴェトナム戦争記念碑を中心に、新たに名前と物語を刻み、またその物語が造られる過程をも明らかにした鎮魂の試みなのかもしれない2012/11/20
КИТАРУ МУРАКАМУ
0
前作の「ジャングル・クルーズにうってつけの日」よりコンパクトな形でまとまっている。ベトナムという舞台、アメリカという物語を結びつけるものが何だったのか。どうしても受け止めることが出来なかった敗北という言葉はいかに了解されてゆくのか、ジャーナリスト、文学、映像といった形で表象されていく姿を歴史家というスタンスから読み解いている。生井さんは批判的な距離の取り方がうまい人だなぁとほれぼれする。2012/01/04