内容説明
いまから約1000年後、地球全土を支配下に収めた“単一国”では、食事から性行為まで、各人の行動はすべて“時間タブレット”により合理的に管理されている。その国家的偉業となる宇宙船“インテグラル”の建造技師д‐503は、古代の風習に傾倒する女I‐330に執拗に誘惑され…。
著者等紹介
ザミャーチン,エフゲーニー・イワーノヴィチ[ザミャーチン,エフゲーニーイワーノヴィチ] [Замятин,Евгений Иванович]
1884‐1937。ロシア、ソ連の作家。ペテンブルグ工科大学造船学科に入学後、革命運動に参加。大学卒業とともに革命運動を離れ、造船技師として働きながら小説を書く。文学者団体を設立して若手作家の保護と育成に注力するなど、一時は文壇の中心的存在となったが、1921年に完成した『われら』をはじめとする、革命後の世界への諷刺を含む作品群が国内の痛烈な批判を浴び、’32年には亡命を余儀なくされ、不遇の内に生涯を閉じる。唯一の長編『われら』は第二次世界大戦後にジョージ・オーウェルによって再発見され、世界中で高く評価されることになった
松下隆志[マツシタタカシ]
1984年生まれ。京都大学非常勤講師。現代ロシア文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
67
導入部からしばらく読みにくくてしんどかった(主人公の主観でもあり、著者の意図でもあるのだろうが)が、中盤から終盤にかけて世界の設定が理解できてくると、目の前が急に開けて面白くなってくる。解説を読んで作品の時代背景を知ることも大事だが、SFとして今の世でも充分成立している。この頃のロシア文学に興味が出ました。2019/10/20
ころこ
48
『1984』が1949年、『すばらしい新世界』が32年でそれより以前に書かれていることに驚いたものですが、本作は更に遡って恐らく21年、恐らくというのは出版がかなわなかったからです。小説のつくりの細やかさでいうと『1984』に後の2作は及ばないのですが、荒っぽいながらもその先駆的な想像力に誰しもが一目置くのではないかと思います。この手のディストピア小説は権力の在処がどこにあるのかを読解することに尽きます。巨大な「父」が権力なのは時代状況やテクノロジーがそうさせているのですが、『1984』が規律訓練型権力で2021/12/27
花乃雪音
37
『1984年』や『素晴らしい新世界』の源流とされるディストピア小説。ディストピア小説に対して私は近未来の世界をイメージしてしまうが本書は映画でいうと『ブレードランナー』より『メトロポリス』でイメージをふくらませた。閉鎖された国家が書かれている作品を読むとこの小説の世界ではどのような国が外にはあるのだろうと考えてしまう。2021/04/28
KI
36
無限に続くのと、終わりがあるのはどちらが幸せなのだろうか。2019/11/30
パトラッシュ
31
学生時代に旧訳で読んだ際は「1984年」に比べ迫力に欠ける小説と思ったが、今読み返すと「自由は野蛮である。権利は迷信である。選挙は象徴である」との考えが支配原理で、監視カメラと盗聴器の充満する国がすぐ隣にあると気付いてしまう。まさに現在の中国は本書で描かれた姿へ突進しているとしか思えない。ロシア革命間もない1921年に予言の書を著せたのも、レーニンやスターリンの行いを間近で観察していた作家の観察眼あればこそだろう。AI化が進む今日、空想とは思えない恐怖に震える。そういえば自民党の党歌も「われら」だったな。2019/10/31