内容説明
“竜門猟犬探偵舎”に奇妙な依頼が舞いこんだ。動物プロダクションから傷ついた一頭のトナカイとともに一人の少年が失踪、その行方を追ってほしいというものだった。竜門卓は相棒の猟犬ジョーを連れ、その臭跡を辿りながら有馬の山中へと分け入るが…(「トカチン、カラチン」)。心優しきアウトローたち。自らの信念に従い行動する男の美学。感動の連作短編集。
著者等紹介
稲見一良[イナミイツラ]
1931年、大阪府生まれ。記録映画のプロデューサーを経て作家になる。’91年『ダック・コール』で第4回山本周五郎賞受賞。至純な魂を持ち続け、感動的な作品を生み続けた。死後も高い評価を得ており、その死が惜しまれる。’94年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
154
'猟犬探偵'の活躍を綴る短編集で、過去作品『セントメリー〜』に登場した人物達もしっかりと元気な姿を見せてくれます。これまでにも色んな作品を読んで、やはりハードボイルドなキャラには憧れを隠せませんが、本作の主人公「竜門卓」には圧倒的&ブッチギリなカッコ良さがあります。そんなカッコ良さにただただシビれ、もはやカッコ良すぎで別次元のレベルで描かれています。それを引き立たせてくれる相棒の猟犬「ジョー」もまたシブさを発揮し、物語をしっかりシメてくれています。とにかくタフで、しかも優しいオトコ前な主人公にやられます。2018/09/02
buchipanda3
112
「セント・メリーのリボン」の続編4篇。失踪した猟犬探しの探偵・竜門と相棒の猟犬・ジョーの活躍がまた読めて嬉しかった。やはり竜門にはそこはかとなく魅力を感じる。彼の生きる姿勢は合理性が重んじられる今の世の中では不器用な生き方となってしまうが、それに一切ひるむことなく自らの信条を貫く姿勢に憧れと敬意を持ってしまう。自分が成り切れないものだけに尚更だ。竜門は人を見る。猟をする者としての勘もあるはず。信用できると思える人には心から情を持って接する。逆には真逆の態度を示す。今作でもその様子が気持ちよく描かれていた。2019/12/28
アッシュ姉
87
やっぱりいい。実にいい。自然体でスッと入り込めるハードボイルド。すべてがちょうど良くて心地いい。願わくば最終話のラストは違う景色が見たかったが、叶わなかった作者の思いを汲み取りたい。また探偵に会いたいので大切に本棚へ。2021/12/14
Junichi Yamaguchi
48
『車と女は扱いよう一つだ』… 変わらずに痺れる主人公。 言葉を話せない相棒もCOOL! この著者の作品にこの先も触れていたいと叶わない思いが膨らむ。。2018/09/07
はつばあば
42
セント・メリーのリボンに続く竜門と相棒のジョー。カッコいいアウトローに悪役配合で益々面白い。・・・残念としか言いようのない稲見さんの死。22年も前に亡くなられていても、良い本はいつまでも私達の傍に残る。2015/03/24