内容説明
二十歳で南方へ出征。空爆で片腕を失い、マラリアに苦しみながらも、自然を畏れ敬い自由に生きる土の人たちとの交流を通じ、豊かな心を持ち続け生き抜いた著者が、次代の子どもたちに向けて書き綴ったありのままの「戦争」の記録。
目次
入隊
最前線
丘の上
土人部落
別れ
戦後の生活
小さな天国
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
33
娘に語るということでわかりやすくまた読みやすく書かれています。軍隊の非人道的な部分も陰惨な書き方をしていないため読みやすいです。現地の人たちとの交流も良かったです。2024/01/20
更紗蝦
26
「娘に語る」というコンセプトのせいだと思いますが、ちくま文庫から出ている『水木しげるのラバウル戦記』には書かれている従軍慰安婦の話はなく、その代わり(?)に大便にまつわる話がやたらに多いです。水木先生にとっての南の国は、戦場という「地獄」であると同時に、自然と共に生活する住民(水木先生風に言えば“土人”)との交流を楽しむ天国であったことがよく分かります。帰国してから漫画家になるまでの間に出会った人たちのエピソードは、戦後の日本社会の混沌を表すと同時に、弱者や貧者に対する排他性を証明しています。2015/12/14
tama
16
図書館本 水木さんファンだから 1985年版 児童書に分類されてる。同時に借りたラバウル戦記から慰安所はカットされてて「娘に聞かせる」という意図が分かります。絵がたっぷりで、しかも殆どが例の「点々」ビッシリで「輪郭線まで点々!」。初期妖怪ブームが去って仕事低迷して悩んでた時期の作品。妖怪は出て来ない!一気に読めますが排泄物関係(水木さんが大好きな素材)が結構多いので注意。戦争ってこうなんだぞと教えるには最適。2016/05/03
三平
13
水木しげるが戦時中の日本のきな臭い雰囲気、死と隣り合わせの過酷な戦場、そしてニューギニアで出会った現地人たちとの交流を語った一冊。"娘に語る"というタイトル通り、お父さん目線で平易に語ろうとする文章。原住民と交わっていく中、それまで考えていた文明的とは何?と疑問を持つのが印象的だった。軍隊の中でいじめられ、命からがら生き残ると何故死ななかったと罵倒される日本人の自分と、自然や精霊とうまく付き合い村民同士仲良く大らかに暮らす原住民。近代人は妙な方向に進歩しているんではないかという話が面白かった。2014/08/16
馨
11
娘に語るというタイトルどおり、優しい口調でわかりやすく書かれています。死と隣り合わせだった前線での軍隊生活や、土人との出会いがたくさん書かれています。土人との長年にわたる交際が素敵でした。こんなふうに子孫に語ってくれる戦争経験者、もっと増えてほしかったと思います。2013/09/02