内容説明
清朝最後の皇帝溥儀を擁して、忽然と歴史の舞台に現れた満国帝国。日清・日露戦争の前史から一九三二年の建国宣言、終戦による崩壊までの十三年という短くも激動の全歴史を、豊富な写真とともに描く決定版。五族協和・王道楽土の夢、開拓団と移民、満鉄経営、関東軍の支配と謀略など、野望と悲劇が渦巻く巨大国家の全貌。
目次
第1部 日本と「満州」(はじめに―なぜ「満州」なのか;朝鮮の覇権を競う日本と清朝―日清戦争 ほか)
第2部 満州建国への道(消えた二つの王朝―清朝の終焉;満州永久独占の野望―第一次世界大戦 ほか)
第3部 五族協和と王道楽土(日本が目指した王道楽土とは―支配と被支配;草創期の満州国経営―リットン報告 ほか)
第4部 日中戦争と満州帝国(日満一体化の実態―満州帝国の誕生;いかにして土地を奪ったか―満州移民 ほか)
第5部 満州帝国の壊滅(ソ連軍の大兵力に蹂躙され関東軍崩壊す―ソ連軍の進攻;満州国崩壊が生んだ開拓団の悲劇―蹂躙された開拓団 ほか)
感想・レビュー
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またの名
12
日本に反抗する者は警察や軍がその場で殺害できる臨陣格殺の権限を制定し、中国人には禁じられた米を食べた中国人を経済犯として収監しながらも「アジア人でみな協力!」と五族協和を謳った、ユーモアセンスが高過ぎる国の歴史。軍事、鉄道、水路、航空を日本に委託し経費は満州持ち、政府や官庁職員に日本軍司令官がご推薦の日本人を任命しなければならないと決めさせられた傀儡国家は、のち首相になる岸信介(安倍総理祖父)が主導した産業計画のもとで一瞬だけ発展。日清戦争に悲喜劇の起点を置いて満州国の成立、終焉までをあらかた把握させる。2017/08/13
Hiroshi
6
1932年の建国から13年で崩壊した満州帝国の本。満州は清朝時代の東三省(遼寧省=奉天、吉林省、黒竜江省)全体の総称。古来、北方民族によって漢民族の中国とは別の国家が作られていた。渤海、遼、金、元、清だ。清朝の初めに女真族は民族名を満州族と呼ぶようになり、やがて満州族が住む地を満州と称するようになった。日本が満州と具体的に関わり合うのは日清戦争から。日本は南満州一体を占領して勝利し、台湾・遼東半島を割譲させた。三国干渉で還付した遼東半島を租借し義和団の乱で満州全土を占領したロシアと対峙し、日露戦争となる。2021/05/22