河出文庫<br> 夏至南風(カーチィベイ)

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河出文庫
夏至南風(カーチィベイ)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 185p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309405919
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

海藍地(ハイランデイ)の街に夏至南風が吹いてくると、果実は腐り、少年たちの死体が運ばれてくる…「海岸ホテル」の兄弟が出会った美しい少年碧夏(ビーシア)は、その夏どこに連れ去られ、彼の身に何が起こったのか?著者の愛する代表作、ついに文庫化。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

masa

72
海から吹きつける夏至南風が、街の腐爛を促すように湿らせる。夏の入り口に似て、大人への入り口は傷みやすい。少年たちの内側は膿み爛れて、無花果のように開いたソレから漂う腐臭と甘い汗。無垢ではいられないなら、やめてしまおう。触れた先端から流れ出る命と入れ替わりで侵蝕する終わることへの焦燥。自己と世界への嫌悪、それでも尚捨てきれない希望、そんな閉回路からの逃走。僕を僕たらしめる傷痕すら醜く溶けて、本当の手遅れになる前に。腐敗した季節。灼けた線路。 So darlin', darlin', stand by me.2018/07/20

mii22.

67
白い太陽は真上から地上に影を刻み付け、不快な熱気はねっとりと肌にまとわりつく。今年も湿気をおびた夏至南風(カーチィベイ)が吹いてきたら夏のまえぶれの腐敗した季節がはじまる合図。少年たちの好奇心は本性を剥き出し攻撃的に愛を貪り食らう。腐爛した果実がざっくり口をひらき吐き出したものは異臭を放つのか、それとも甘い誘惑の匂いを放つのか。少年はなぜ腐爛してゆくものに惹かれるのだろう。やがて夏が訪れる頃には腐爛し崩れ落ちた果実も土にかえる。何事もなかったかのように季節はまた巡りくる。2019/07/30

Mishima

35
どういうわけか、青いままで果実は他に落ちてしまう。腐爛を待ちながら死までの道のりをじっくり味わうひとつの命は選ばれた道化師あるいは伝道師。形骸化された儀式のような性行為は熱を失っているくせに執拗に繰り返すことを強いる。純化された死を望んでいても、その希望は知らぬ間にあっという間に奪い去られる。腐爛するにはもってこいの大気の熱量。人は間断なく生を全うするために、ただそれだけのために息をしている。地平線上に公平に生が載っている。見えない賽は投げられる。これ以上ないくらいに完成された世界の中で。2018/07/07

小夜風

32
【所蔵】もうすぐ夏至なので長野さんの「夏至祭」を再読したくなり、そういえば他にも「夏至」が付くタイトルの本があったな~と積み本の中から引っ張り出しました。読み始めてすぐに「あ、これ嫌いな方の長野さんだ」と感じ、読むのをやめようかと迷ったのですが、他の方のレビューにこの本が長野さんの中で一番好きという方がチラホラいたのと、主人公がろうあのような表現があったので気になり、何とか読んでみました。……やっぱり嫌いです(苦笑)。こんな爽やかそうなタイトルと表紙なのに、苦手な人はトラウマになるレベル、要注意です。2016/06/18

藤月はな(灯れ松明の火)

31
男女関係なしの近親相姦、一方な依存と嫌悪、嗜虐とその逆転、熟れ爛れた女と冷ややかな男と諦めたようで強かな少年。そして一時の冷たい美と熱量を放つ腐乱死体。夏の風もない乾いた日差しと廃墟の描写に干からびたミミズ、刈られた草の匂い、轢かれた蛙、死にかけた蝉など夏が来るたびに生の頂点と同時に死の季節だと思う気持ちを改めて強く、感じました。2012/08/12

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