河出文庫<br> 文章教室

河出文庫
文章教室

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 326p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309405759
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

恋をしたから「文章」を書くのか?「文章」を学んだから、「恋愛」に悩むのか?普通の主婦や女子学生、現役作家、様々な人物の切なくリアルな世紀末の恋愛模様を、鋭利な風刺と見事な諧謔で描く、傑作長編小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

222
タイトルからすれば谷崎や三島の『文章読本』の金井版に見えるのだが、実はこれはれっきとした長編小説なのだ。後に書かれた3作と合わせて目白4部作と呼ばれるようになる作品群の第1作にあたる。小説作法はかなり独特だ。小説中には多くの他の作家の作品が引用されたりしつつ、同時に自身の作品をも含めた批評意識が同時進行していく。プロット自体は、ありきたりの恋愛(けっして燃えるようなそれではなく)が描かれているに過ぎない。それでは、何が小説を形作っているのか。様々な、(わざと)当たり前に語られる「言説」こそがそれである。2013/08/11

harass

63
初金井。数冊積読のままのをようやく崩す。ボヴァリー夫人が下敷きにあるのは主人公の主婦の名、絵真から察せられる。エッセイ講座に参加する絵真や、その娘桜子やニューアカブーム当時の知的文化人である評論家や小説家たちの揶揄はこの古典と同じだ。とくに絵真のエッセイ練習帳の引用の仕方が実に上手い。ありがちな表現の連発でそれゆえに意地が悪く頭の良い著者に感服。全方位的なの知的虚栄心と俗物さの嫌らしさを描いているのだが、読者の自分も思い当たるフシがあるので、苦笑いをしてしまう。実に巧みな小説だ。一目置かれる作家と納得。2017/05/22

ちぇけら

28
「なにかまるで今までに経験したことのない」ほどに「身も心も柔らかく溶けて熱く燃えあが」り、「午後にあって夕方には別れ」る「〈世帯じみ〉」た「≪不倫の恋≫」により「多摩川べりのモーテルから出」た体は「〈充実した愛の交渉の後のだるさ〉」につつまれるが、私だけが彼と「性交する権利を持っているわけではない」から、若い女に(大きな理由などなく、ただ若いというだけで)「〈女としての嫉妬を感じ〉」て「深く傷つけられている」と思う一方で、「〈愛欲の地獄に、私のような平凡な女が溺れるとは!〉」と呆れつつも満足するのである。2020/03/30

sasa-kuma

19
面白かった。目白4部作の1作目(私は3作目)。「引用」「括弧」「恋愛」「文章」「作家」「紋切型」。現役作家(男)の文章教室に通う主婦の絵真、夫の佐藤氏、娘の桜子を中心にぐるぐる回る恋愛小説(下敷きは「ボヴァリー夫人」だそう)。読み終わる頃には、そりぁ、私には文章なんて1行も書けませんと全面降伏してしまいそうな小説だった。登場人物の誰1人として好きになれないのに、読むのが楽しくてしょうがない。「偶然に導かれる」人々。先日読んだツルゲーネフの言葉を思い出す。『偶然が、全能の力をもっている』2015/05/24

たま

16
色々な楽しみ方がある本だと思いました。風俗小説として読むと、人々の思惑が交差しあう様子や人々の持つ心の空虚などに共感や苛立ちを覚えることができて楽しかったです。また、本作は地の文と主人公の日記からの引用文、作中の現役作家の著作や実際に存在するだろう書籍からの引用文とを繋ぎ合わせてできた小説であり、この引用文というのが抜き出すとどれも似たり寄ったりに感じられることから、「文章を書くこと」とはどういうことなのか?という投げかけや皮肉にもなっているように思います。2015/01/29

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/512815
  • ご注意事項