河出文庫<br> 綺羅星波止場

電子版価格
¥473
  • 電書あり

河出文庫
綺羅星波止場

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 181p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309404523
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

大陸の涯での山地から運ばれて来た石は瑠璃色、それはやがて砕かれ、「群青」になるという。その鉱石が欲しくて、夜更けの波止場をさまよう灯影と垂氷の前に、丸眼鏡の妙な麺麭屋が現れた…。長野ワールド、夢の傑作短篇集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

(C17H26O4)

89
一面の群青。濃紺の闇に天も海も静かに溶けている。群青は瑠璃色の鉱石を砕いて粉末にしたものなのだそうだ。灯影と垂氷でなくてもその鉱石を欲しくなる。想像した。ピックで鉱石を砕いたら、群青が火花のように飛び散った。その深い深い青に心ごと染まったらどんなだろう。しん、とした喜びと悲しみで満たされてきっとふるえてしまう。麵麭屋の男がかまどから取り出し手に載せてくれた碧く燃える石は、熱を持たない。この石のほのおで焼いた三日月麵麭は夜の味がするだろうか。誰もいなくなった埠頭に綺羅星が降りそそいでいる。2019/08/31

カフカ

61
瑠璃色の鉱石を砕いてできた群青色の空、硝子箱の中にある不思議な白銅貨、小雨通りにひっそりと佇む「月光舎」と呼ばれる骨董屋、鉱石の結晶形の照明燈をさげた、夏至の頃に現れる謎の劇場…。頁を開けば、煌めき透き通った言葉たちで溢れている。あとがきで長野さんが「出現する世界を、裸眼ではなく、一枚の澄明な硝子を透かしたように書かねば不可ないと思っている。その硝子板が、汲みあげたばかりの湧水にひたされて澄んでいるのなら、なおよい。手が届きそうで届かない。はっきり見えるようで、掴みどころなく輪郭はぼやけている。→2023/04/21

mii22.

56
記憶の中では鮮明すぎるほど鮮明な景色や音や感触も、現実ではなく、虚像や幻影や錯覚だったかもしれない。と思うとき、その曖昧さがもどかしくもあり、心地よくもある。夢の中に閉じ込められるという恐怖がよぎっても、少年は危険な冒険をせずにいられない。垂氷と灯影、銀色と黒蜜糖と月彦、そんな少年に憧れを抱く。そして長野作品がみせてくれる情景はたとえば路面電車や足踏みミシンのように強く郷愁を誘い胸を痛いほどキュンキュン締め付けてくる。読むのをやめられない快感がそこにある。2020/03/30

優希

56
夢と現実が曖昧な美しい短編集です。日常ではみつけられないキラキラしたものであふれていました。瑞々しい輝きを放つ美しい非日常の世界、綺麗な小物の数々に包まれている感覚が好きです。素敵なモチーフが心に沁みこむ素敵世界に癒されました。長野さんの世界が凝縮された魅力的な作品です。2014/10/07

青蓮

47
数年ぶりに再読。この頃の童話風の作品が凄く好きです。イメージとして、透き通った紺碧のインクで描いたような世界が浮かびます。相変わらず、出てくる食べ物が美味しそう。三日月麺麭や南海珈琲、ピカピカを味わってみたい。垂氷と灯影が登場する「綺羅星波止場」「雨の午后三時」がお気に入りです。2015/02/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/445361
  • ご注意事項