河出文庫<br> あゝ、荒野

河出文庫
あゝ、荒野

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  • サイズ 文庫判/ページ数 343p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309403663
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

家出してボクサーになった〈バリカン〉は、ジムの窓から夜の新宿のネオンの荒野に目を向けて、一つの疑問にとらえられる。「西口会館のSUNTORYのネオンのYの字だけが後れて点くのは何故か?」―。この主人公に、ライバル新宿新次、セックス好きの曽根芳子、自殺研究者の川崎敬三ら多彩な人物を配して繰り広げられる、寺山修司唯一の長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いたろう

42
映画が公開されるということで、20数年(!)積ん読していた本をやっと読了。この河出文庫版は既に絶版? 改めて、これが寺山修司唯一の長編ということに驚く。他の作品はすべて戯曲だったか。ただ一直線のストーリーではなく、まるで新宿のネオンがまたたくように登場人物が切り替わり、そこに文学作品、詩からの引用があるかと思えば、同じ次元でTV、歌謡曲からの卑俗な世界が折り重なる。都会の片隅、どうしようもないが愛すべき人々。まさに寺山修司の世界。今となっては叶わないが、映画は、本当なら寺山修司自身で撮って欲しかった。2017/10/09

501

14
登場人物の誰もがそれぞれの孤独を抱え生きることに思い倦ねる。登場人物のぜいぜいとした息づかいが聞こえてきそうだ。死ぬまで殴り続け、殴られ続けるふたりのボクサーのラストの姿に息苦しを覚えるのと同時にカタルシスを感じる。2019/12/22

ブラックジャケット

4
不覚にも寺山修司のこのような長編小説があるとは知らなかった。映画が公開され、かなりの高評価だったが、時代設定が2021年の東京オリンピック後になっており仰天。あわてて図書館へ。今の人には馴染みがないのか、閉架図書になっていた。発表は66年で、舞台はもちろん新宿。ボクシングに人生を賭ける新宿新次とバリカン健二の物語。各章には短歌がならび寺山色満載。健二は吃音の赤面症、60年代には多いキャラだった。裏町の実業家宮木は東北出身の性的不能者。大学の自殺研究会など屈折ぶりは凄まじい。新宿のネオンの荒野が見える。 2018/06/30

読書メーターJr.

1
しょうもないことを真面目に書いていて笑っちゃうし、全体的に核心を突くような言葉が散りばめられていて考えさせられる。最後の場面は引き込まれた。もうとにかく面白い。個人的には、競馬場での馬のレースと人の人生を重ねる話が特に印象に残った。「血統的に敵わねえものは、逃げるしかないのさ。逃げ損ねたら一生のドジだ。」「心理的な逃げ勝ち」「あとはもう、手をかえ品をかえて相手を蹴散らしてゆかなきゃ、陽の当たる場所へなんか出られやしないんだ」2021/01/29

鳥好み

1
詩のような小説だと感じました。 ころころ場面が変わる作品は苦手なのですが、最後に行くにつれて人物の関連ができてくるのですっきり読めました。映画のように頭の中に情景が浮かび、特にラストシーンは臨場感がありました。

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