出版社内容情報
死んだ農奴の名義を買い集めるために全ロシアを旅するチーチコフを通じて19世紀ロシアの底辺を描き出した巨編、衝撃の新訳。
東海 晃久[トウカイ アキヒサ]
ロシア文学研究家。訳書にソコロフ『馬鹿たちの学校』『犬と狼のはざまで』。
内容説明
最も偉大なロシア文学の読まれざる古典、新訳で復活。死せる農奴の魂を買い集める詐欺師とともに十九世紀ロシアの地獄と煉獄をへめぐる未完の“叙事詩”。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
65
「死せる魂」を買おうという何とも怪しげな男が登場するこの話は、だが、悪魔的な話、不気味なホラーかというと、そうではない。謎めいた男チーチコフが「死せる魂」を探し求める旅で出会うロシア的な人々やロシア的な出来事、得体のしれないチーチコフを巡って繰り広げられる誤解をえがくことこそが主題なのだ。一つ一つの出来事がコメディであり社会批判となっているから、この少し軽めの新訳は読み易く、話にとてもよく合っていると思う。2017/04/14
うらなり
32
もともと、わたしはユーモアのセンスが乏しく、作者はここは笑ってもらおうと思って書いてるんだろうなあという感じはするのですが、トルストイの戦争と平和のほうが笑えました。作者ゴーゴリも精神的な悩みを抱えての執筆なので、いわゆる、コメデイというより、『いたい』作品に感じました。2部構成で、がらりと趣は変わって2部になってからのほうが人物に対するアプローチなど奇を衒うようなところが少なくなって親近感がわいてきまた。作者は2部は失敗作とみなしていたようですが。2022/08/22
fseigojp
29
ゴーゴリが描いた農奴解放前の露西亜 青空文庫で読んだが,訳はこちらが注釈もあわせて良 再読必至2017/01/07
まふ
19
「死せる魂」とは死んだ農奴のことであり、きわめて即物的な話。これに人頭税がかかるため所有者から買い取って負担を軽くさせ、これを担保に金を借りて土地所有者になろうという悪だくみのコーコチフという詐欺師を軸とする話だ。出てくる農奴所有階級の弛んだ日常が余すところなく描かれ、どの逸話も面白い。生きた農奴は売買されてひたすら所有者に従う存在でしかないが、1861年にアレクサンドル2世の農奴解放令によって自由になる。*2022/04/19
フリウリ
14
プロットはプーシキンからいただいたという本書。高知の美術館でシャガールによる本書の版画を見て、いつか読まねばと思っていました。死せる「魂」(タマ、とルビがある)、つまり幽霊農奴を買い集めて地主に見せかけ、一儲けを企むチーチコフの物語ですが、チーチコフが、買い取った魂の名簿(名前とともにあだ名や特技などが記載された名簿)を見ながら夜、一人でその魂たちに語りかける場面は、怪しくも滑稽、かつ何か温かいものが感じられて、素晴らしいと思いました。シャガールの版画とともに読みたいです。92024/05/19