内容説明
領土拡張に積極的な武田晴信と北信・川中島で闘った景虎は初めて敗れた。雪辱に燃える景虎の許へ房州の里見氏から北条氏康の横暴の訴えが届く。小田原城を包囲した景虎は関東管領に就任し、上杉の家督も譲られ上杉政虎と名を改めた。そして永禄四年(1561)に、上杉・武田両軍は雌雄を決すべく川中島で一大血戦を企てることに。
著者等紹介
海音寺潮五郎[カイオンジチョウゴロウ]
明治34(1901)年、鹿児島県に生れる。国学院大学を卒業後、指宿や京都で中学校教師を務めるかたわら創作にはげむ。「サンデー毎日」大衆文芸賞受賞を機に、執筆生活に入る。昭和11年、『天正女合戦』で第3回直木賞を受賞し、文名を不動のものとした。和漢の書にあまねく通じ、綿密な時代考証の上に、独自の史観を展開し、小説に随筆に新たな領域を拓き、多くの著作を残した。昭和52年12月没
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
301
いよいよ終幕。じっくりと堪能した。他レビューにもあるように、こんなに若い時期で終わるとは思っておらず、もう少し読ませて欲しかった。しかし、あとがきを読んで、青春譚を描きたかったのだと理解すると、この結末も、描かれる女性の数々も納得出来る。信玄=晴信と諏訪御前も幕間に見せて、戦や政での公の部分以外でも対比さすることで、よりライバル関係に深みが出ていた。大舞台である川中島を、謙信の秘めた恋心に絡めて展開してくるとは、予想を裏切られたが悪くない。気になっていた藤柴の最後はネタか?と思うほど唐突かつ短絡的な処置。2020/05/05
レアル
65
やはりラストは川中島まで。史伝タイプの著者の作品と比べてこちら小説は読み易いし流れとしても面白いが、一つ一つ史実に基づき、かつ鋭い視点で人物描写を描く史伝タイプの 方が私は好きかな。小説には小説の、史伝には史伝の其々の良さがあるんだけれど。。それにしても唐突に終わるこの物語。もう少し先まで読みたかったかなぁ。2018/01/11
ともくん
55
最後の上杉謙信と武田信玄の合戦は、読み応え抜群であった。 だが、その他の場面は、少し退屈であった。 そして、突然物語が終わってしまったのが残念。2020/03/12
はらぺこ
48
京に上って帰ってくるまでが退屈でした。 上・中巻では父や兄から嫌われ、兄の妾は妲己や楊貴妃を思わせるような傍若無人ぷり。この敵が分かり易い設定と小が大に勝つワクワク感が有ったのに下巻は非常にカタイ。景虎は武田信玄を悪人視してるけど、景虎との考え方の違いを作者が説明してくれるので、景虎の方が小さく見える事もあった。多分、潔癖で潔い人が好きな人には景虎に共感出来るんでしょうけどね。 大所帯になると当然かも知れないが最初からの家臣の影が薄くなっていくのは読んでて寂しかった。 2011/10/11
さつき
38
上杉謙信と武田信玄。両雄の気質の違い、戦い方の特徴などじっくり楽しんで読みました。あとがきで作者も語っていましたが、本当に対照的な二人です。だからこそ、幾度も川中島でにらみ合うことになったのでしょうか。物語としては、乃美との悲恋が印象的です。良い意味でメロドラマ。すれ違い。障害のある恋。歴史小説ならではと感じました。現代に置き換えたらコメディになってしまいそうですからね。こういうドラマチックな展開は時代ものを読む醍醐味の一つです。欲を言えば、もう少し先まで読みたかったですが…2016/07/24