内容説明
奇抜な着想から生まれた人目をひく衣裳、思わず笑いを誘われる軽妙な身振り―。江戸の街を往来し、庶民に日用品を運んできた物売りの数々を、当時の絵画資料をよりどころにいきいきと再現、それぞれに鮮やかな彩色をほどこす。江戸風俗画の研究に打ち込んできた著者が二十数年の歳月をかけて描きあげた物売り百五十姿を、オールカラーで収録。
目次
季寄せ
飲・食
飴・甘
薬
手遊び
道具
雑
大道芸・物貰い
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
108
人口100万人を誇る江戸の士農工商市民の枠外の「自由人」のうち「物売」に絞って日本画家三谷一馬氏が一職業づつ丁寧に描き込んだ図鑑。季寄せ、飲食、薬、遊び道具、道具、大道芸とその他の雑業を含め150種類のユニークな物売が綺麗な絵で紹介されている。このうち「季寄せ」は凧、桜草、稗、菖蒲、朝顔などで、売り子も季節ごとに何度も登場したのではなかろうか。また「風鈴そば屋」の「かつぎ屋台」のつくりを見るとそば碗置き、箸置きなどが細かく書かれてあり、日本人の几帳面な創意工夫がこんなところにもあらわれている、と感心した。2023/10/30
kinupon
58
再読。暑い夏に江戸の涼風が漂ってきます。2018/07/30
マカロニ マカロン
13
個人の感想です:A-。本書は棒手振りと呼ばれる、店を持たない行商人の様子を文と絵で再現した本。文庫本と言うことで、絵のサイズが片面解説、片面カラーの絵で構成されているので、著者三谷さん素晴らしい日本画(浮世絵)が十分に楽しめる。行商なのでかなりニッチな職業があったことが窺える。正月明けに年賀で届いた不要扇を廃品回収する人、古傘買い(直してまた売る)、絵馬売り、きりぎりす売り、耳の垢取り、猫の絵描き、幽霊の物貰い等など。有名どころでは冷や水売り、「ひゃっこいひゃっこい」と言いながら、売る水は温かったらしい2023/08/29
singoito2
8
読友さんきかっけ。見開きごとに登場するカラー版の挿絵がとても美しい。手元に置いて読むと言うより、眺めてめくって愉しむ一冊。同著者の他の本も面白そうです。2023/11/07
nemunomori
6
左頁に綺麗なカラー図。右頁に簡潔な解説。普通の物売りに混ざって「知盛の幽霊」「猫の絵かき」「幽霊の物貰い」など、なんだソレ?な話題がさりげなく挿入されていて楽しいです。一番傑作だったのは「伽蘭湯薬売り」かな。あとがきによると「黄表紙や洒落本の挿絵、肉筆浮世絵、版画等から、江戸期の物売りの風俗」を作者が復元したもので、原画のほとんどが一色で描かれているのですべて彩色されています。色合いがとても自然で趣があって素敵です。2015/11/01