内容説明
四億年前、エビやカニと共通の祖先から分かれて上陸した昆虫の祖先は、体節を機能別に特殊化させながら進化を遂げてきた。翅の獲得と発達は移動能力を飛躍的に増大して棲息環境の選択を可能にし、一方、多様な食物を求めて口器の構造を変化させた。今や地上至る所に分布し、一千万種を超えるといわれる。本書は固有の形態を完成させた現生昆虫のすべての目をその系統関係から見渡そうとする試みである。カラー口絵、精細図版付載。
目次
1 エントマから昆虫へ
2 昆虫という生きもの
3 昆虫の多様化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
390
知っているつもりだった昆虫。しかし、それは昆虫全体のごくごくほんの一部に過ぎない。日頃、目に入らない(見ようとしていない)昆虫が、身の回りだけでも実にたくさんいるのである。例えばトビムシ。日本の森林土壌中1㎡あたりに少なくても4万個体が棲んでいるらしい。昆虫を代表する種の一つだと思っているトンボは、昆虫の中では旧型に属するらしい。言われてみれば翅の構造は確かに古いかも。しかも日本に200種もいたなんて。本書は、昆虫を通じて分類学の面白さも伝えてくれる。そして、それはアリストテレスの慧眼にまで及ぶ。2023/02/25
姉勤
28
虫。約百万種、毎年新種が見つかり、灼熱の砂漠から南極まであらゆるところに適応し、ある意味地球の支配者である生物。本書は節足動物としての昆虫のポジション、その中の昆虫を大分類する。乱暴に言えば、翅(はね)の特徴がそのまま目(もく)としてまとめられ、一見そっくりな両者がまるっきり別系統だったり、似てもつかない両者が同じ目だったりと、大変興味深い。目の各項に、口の構造、特徴ある器官、成体や幼体、変態の線画で細かく載っている。 2018/01/22
俊介
13
昆虫の世界って知ってるようであまり知らないことも多い。そこで、改めて昆虫とは何かを学術的、進化論的に解説した良書だ。昆虫がどのように進化していったかを、それぞれの種の形態の違いを細かく挙げて説明してくれるのが、なかなかマニアックで面白い。トンボは進化的には古い形態を残した生き物なんですね。しかしなんと、既知の全生物種の数は175万種らしいが、著者によると未知のものを含めると昆虫だけで1000万種は存在するだろうと予想されてるらしい。素晴らしき(人によっては恐ろしき?)昆虫ワールド。2021/07/04
海星梨
8
形態的な分類学の立場による昆虫全体の概説だった。うーん、タイトルから、虫の進化の歴史の本だと思って借りてきたんだけどなぁ。遺伝子分析が始まったばかりの時代の出版なので、分類学自体の常識もここからかなり変わっていると思うんだよね……。あとは、フツーに用語の解説がないので目が滑る滑る。一通り目を通したけど、真社会性のシロアリはハチやアリとは違って、女王と王によるもので、二匹が死んでも副女王と副王が出現して巣が続くというのくらいしか知識が残ってない。2023/10/20
中島直人
7
(図書館)虫の分類について。読んでいて、あまり面白いものではない。はっきり言って気持ち悪い。が、様々な種に分かれて進化を遂げてきたこと、進化に際し、翅と口器が大きな要素となってきたことが、よく分かる。2022/12/13