内容説明
維新の一大理念であるはずの天皇親政は、明治政府誕生後間もなくして形骸化した。事態を憂慮した天皇側近の元田永孚、佐々木高行ら侍補グループは、名実ともに実効ある親政とすべく、薩長藩閥政府に対峙する。本書は、明治天皇から「左右ニ陪シテ誠ニ進規ニ尽ス」の御沙汰を下賜された数少ない維新官僚・佐々木が残した膨大な日記を読み解き、その親政論の政治的意義を明らかにするとともに、当時の政府と宮廷の状況を描出する。
目次
序論 天皇親政論の系譜
第1章 明治維新と佐々木高行
第2章 公議政治と佐々木高行
第3章 維新改革と佐々木の政局観
第4章 維新の宮廷
第5章 天皇親政運動と佐々木高行
第6章 侍補職廃止後の天皇親政運動
感想・レビュー
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バルジ
2
佐々木高行を中心として展開された天皇親政運動を佐々木の遍歴・思想的立場から分析する。佐々木や元田永孚ら侍補グループの行動は確かに「天皇親政」の実を挙げるという動機であっただろうが、やはり民権運動と同じく政府を揺さぶる一種の政治運動と政府主流派から捉えられても仕方ない。しかし佐々木らの天皇親政観は憲法発布後度々機能不全に陥る政府を上手く調停し憲法の精神に最も忠実であった明治天皇の姿と重なって見える。その点佐々木らの望む天皇親政の一端は明治憲法体制の下で伊藤博文など政府首脳によって叶えられたのかもしれない。2020/05/05
dogu
0
維新後に側近と明治天皇自身によって目指され挫折した親政について2021/10/18