内容説明
子どもは「授かりもの」、「死に水をとる」という感覚、江戸人の目ざした「いい老人」、武士の「看病断」、骨をひろう日本人の遺体観、水子を怖れる「いのち観」、一昔前の病人と看護婦の意外なあり方…。漱石、鴎外、向田邦子、江藤淳などの文章や新聞の歌壇から無意識に息づくメンタリティを掬いあげ“癒しの時”を紡ぎ出していく。迷走する現代医療を問い直す珠玉の断章。
目次
生老病死(子どもは「授かりもの」―生殖観いまむかし;産婆、乳母、哺乳瓶―産育事情いまむかし;「老はたうとく」―老年観いまむかし ほか)
医療と文化(「朝湯の帰りに」往診―江戸の患者と医者;「看病断」で在宅ケア―江戸の介護休暇;「尻の穴からのぞき」―江戸の内視鏡 ほか)
健康と文化(「心は楽しむべき」―江戸のメンタルケア;「いき」な老い方―江戸の現役老人たち;「撫でさすり」―祈りのパフォーマンス ほか)
いのちと文化(いのちの値段―医療費いまむかし;「緩和するために」―作家と緩和医療;「楽に死なせたら」―作家と安楽死 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
12
大好きな立川氏。充電と思って読んだのだが、案に相違し、感銘。 小説家や詩人の文引用が豊富で知らない言葉が満載、貯金できた。 執筆は15年近くも前、なのに今日の状況を鋭くついており、参考になる。 医療、看護、介護、地域の在り様、自身の生きざま、長寿長命とは・・そして魂とは。 死のイメージを「花野」に例えて来た日本が西洋の「死の舞踏」に変容しつつある事。 「老い」をいとう事は地域や家族が持つ力を喪失していくことへの現れ。 「福子」の存在、漱石時代の訪問看護師、そしてサイコオンコロジー。 興趣に満ち満ちの一冊。2013/09/09