感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミツ
8
再読。アメリカの時代と共に生き、時代と共に忘れ去られていった孤独な詩人ブローティガン。彼の描く物語はどれも夢のようであり、世界の果てを思わせる。そしてそれはアメリカの夢でもあった。アメリカの夢が終わる時、彼の運命もまた決定づけられたのではなかったか。日本の東京という異国の地にも居場所はなく、カリフォルニアの暗い森の中で自らの頭を撃ち抜いた彼。本書はそんな彼への著者の深い哀悼の念と感傷に満ちている。しかしまた、彼が死してなお、彼の精神は作品を通して脈々と受け継がれている。2010/11/19
あなた
8
ブローティガンにとって文学とは弱者のものだった。弱者による弱者のための弱者が書いた「それ」だった。藤本和子はそこに並々ならぬ理解を示しながらも、訳しすぎることのないように切々と訳していった。そうやって、西瓜糖の世界はニホンともアメリカともつながっていった2009/07/13
Mako
4
「ブローティガンの作品の中で、わたしがもっとも愛しているのは『アメリカの鱒釣り』と『芝生の復讐』と、それにこの『ハンバーガー殺人事件』である」という、最後のほうの文章を読んで泣いてしまった。愛がいっぱい詰まっている本だった。2013/01/21
三柴ゆよし
4
死と孤独に彩られた作品を数多く残し、ついにはそれに捕らわれたかのような最後を遂げたブローティガン。ほとんど判別つかぬほど腐敗した遺体のそばには、死をはじまりとして受け入れる詩が残されていた。作品解釈、交友関係、そして愛娘アイアンシへのインタビューから、作家の抱えた孤独の一部に触れる。翻訳者であり、また友人でもあった著者だからこそ書けた本だと思う。ビートニク文学のイコンとしてもてはやされたことが、彼という作家にとっての悲劇であった。冥福あれかし、リチャード・ブローティガン。2009/12/08
agrippa69
3
公私にわたりブローディガン本人に、そしてもちろん翻訳家として彼の作品に接してきた藤本さんにしか書けない本です。とにかく、暗い。それは自殺したブローディガンに対する後悔や諦念に裏打ちされたものではなく、藤本さんでさえ手が届かない、水の底でゆっくりと腐って形を失っていくことを良しとするような暗さです。2010/08/11