出版社内容情報
ねじまき鳥に導かれた謎の迷宮の旅へ。消えた猫、水の無い井戸、出口の無い路地。世田谷の住宅地から満蒙国境まで圧倒的迫力で描く探索の年代記。〈読売文学賞受賞〉
内容説明
ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜を始める。暴力とエロスの予感が、やがてあたりを包んでいく。誰かがねじを巻きつづけなければならないのだ、誰かが。1984年の世田谷の露地裏から1938年の満州蒙古国境、駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
69
以前読んだときは、その複雑な構成の物語にただただ圧倒された。でも、この歳になって読み直して思う。この小説は「妻をめぐる冒険」なんだと思う。「僕は彼女のことを最後までよく知らないまま年老いて、そして死んでいくのだろうか?そのような未知の相手と生活を共にする僕の人生はいったい何なんだろう?あとになってわかったことだが、そのとき僕はまさに問題の核心に足を踏み入れていたのだ」以前読んでたときは結構素通りしてた文章だったけど、多分これが核心なんだ。村上春樹が核心だと書けば、それは絶対に核心なわけなのだから。2023/09/20
NAO
56
何ということもないちょっとした変化から、それまでの日常が大きくゆがんで変化していく。こういった構図はこれまでに読んだ村上作品の中でよくあるものだが、『1Q84』を先に読んでしまっているからか、『1Q84』との類似点の多さに驚いた。いくつも出てくるキーワードは、これからどういう風に話と絡んでくるのだろう。強烈なインパクトがあった間宮中尉の体験談もきっとこの話の中でとても重要な役割を持っているのだろうが、それはいったい何なのか。不穏な空気が漂うなか、先に進むしかない。2015/10/12
拓也 ◆mOrYeBoQbw
40
スリップストリーム長篇。あらすじにも有る様に、世田谷の裏路地の枯れた井戸から二次大戦末期の満州~ソ連抑留、秘密の倶楽部と様々な象徴的な話が語られる中、一人の女性の深淵に踏み入る事を中心に物語が進められます。SFやファンタジーで言う所のテレパシーや憑依、幽体離脱的な描写も多く、入り込むのに時間が掛かる方も多いと思いますが、「他人との共感」という、コミュニケーションの基本でありながら最も難しい部分を喪失したらどうなるか?その本質が作中に感じられたら、読み易く面白い手法だと思いますね~(・ω・)ノシ2016/06/05
林 一歩
38
数え切れないほどの再読。何度読んでも新たな発見があり面白い。村上春樹氏とスティーヴン・キングの長編は読み終えると無性に疲れます。心地良い疲れだけれど。第二部へGO ! 2013/03/04
林 一歩
36
本当に久しぶりの再読。心身ともにタフな状態でないとこの作品は読めない。現在、タフな状態ではないけれど…。皮剥のシーンは何度読んでも鳥肌が立つ。暗喩だらけの序曲といったところか。2014/11/20