出版社内容情報
美と愛情の朗らかな使者ハイネ。だが彼はユダヤ系ドイツ人という宿命の星の下に生れ、人類解放の旗手として、祖国を愛しながら亡命先のパリに客死した薄幸の詩人であった。甘味な歌に放浪者の苦味が加わり、明澄さの中に幻滅や独特の皮肉の調子がまざる。彼の代表的詩集『歌の本』『新詩集』『物語詩集』から、悩みを秘めた純粋詩人ハイネの詩魂を伝える珠玉の作品を選んだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
118
ロマン派の代表格ハイネの詩集。ハイネの詩集をまとめて読むのはこれが初めてだったが楽しく読めた。失恋をテーマにした抒情詩は私の好みから外れていたが、ロマンチックな感情に浸りながら、現実の世界に目を向けるほろ苦さが良かった。夢と現実の相克を描くものが多くて、それはハイネのユダヤ系ドイツ人という出自から来るものかもしれない。Ⅱに収められた詩は音楽的で、スケールが大きく、ハイネの詩魂が躍動しているのを感じた。名翻訳者だった片山敏彦氏の訳詩も素晴らしい。2015/03/15
たーぼー
53
ハイネの苦悶。それは打ち砕かれた故郷への想いに映される。しかし、絶望の淵にあっても小さな星々が煌めく夜空を見上げ、これに触れようと手を伸ばす彼の姿は、たとえ足元が不安定で支えを見出せなくとも、生への畏敬と溢れんばかりの他者への愛を忘れることはない。もし、瞬時に数里を飛べる靴があったなら何処にいけばいい?ハイネは教えてくれる。幾多の峰を越え愛しい人の元へ急げばいい。もし、懐疑でいっぱいの頭とモヤモヤが零れ落ちそうな胸を抱えているなら何処にいけばいい?ハイネは教えてくれる。憂いの歌を携えながら旅に出たらいい。2017/03/31
しゅてふぁん
43
読んでいて心地いいなと思った詩が多くあり、それらの訳文は五音と七音の繰り返しだった。素敵な翻訳!まるで万葉集の長歌を読んでいるみたい(笑)『君が瞳を見るときは たちまち消ゆるわが憂い。君にくちづけするときは たちまち晴るるわが思い。 君がみむねに寄るときは 天の悦びわれに湧き、君を慕うと告ぐるとき、涙はげしく流れ落ちたり。(P46)』2018/07/03
aika
39
恋心と自然が溶け合って、五線紙のうえに美しい旋律が紡がれているような心地になりました。「わが悲しみのよいゆりかご」という詩が好きです。心から愛したひと、そしてそのひとと出会った場所に、狂気的で熱情的な感情を発露しながら、一生の別れを告げる哀しみが溢れていて、はっとさせられます。たとえ叶わなくても、思いが届かなくても、一喜一憂しながら思い続ける究極の片思いが、ハイネの詩の原動力なんですね。訳文の文語的な言葉遣いが難しく感じました。2016/06/28
双海(ふたみ)
30
再読。前回の記録が2013年2月17日になっているので、ちょうど3年ぶり!以前に比べて、恋の詩がこころに響きます。手に取る如く、実感をともなって。「君が瞳を見るときは/たちまち消ゆるわが憂い。/君にくちづけするときは/たちまち晴るるわが思い。」・・・昨夜、おふとんで切なくなっていました。「源氏物語」と並行して、海外詩人を再読していこうかな。2016/02/04