内容説明
湾岸戦争がイラクの全面屈伏に終わって12日目の朝、クウェート政府が新聞に掲載した感謝国リストに、「JAPAN」の5文字は見当らなかった。砂漠の熱戦に130億ドルもの巨費を投じながら、世界から冷笑をもって迎えられた大国ニッポン。無惨極まる「湾岸外交敗戦」の裏には、内部抗争に明け暮れる、霞が関の官僚機構があった―。驚異的な取材力で描く情報ノンフィクション。
目次
第1章 手さぐりのミッション
第2章 策士たちの秋―バンダルとベーカー
第3章 日本への遺書
第4章 中東貢献策漂流す
第5章 会議は踊る
第6章 「Dデー」を探れ
第7章 テヘラン発緊急電
第8章 密室の「湾岸方程式」
第9章 ハシモト蔵相の光と影
第10章 痛恨の二元外交―日本敗れたり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
23
湾岸戦争において、なぜ日本は多額の出費を強いられたのに避難され続けたのか?第二次世界大戦時の悪夢がよみがえる。外務省と大蔵省の意思疎通の悪さ、戦争間近になっても緊張感の薄かった大使館、開戦すると大使館に避難していた人々は人質として隔離されてしまう。もちろんアメリカも随分尊大であることも事実だが・・・。2017/03/03
茶幸才斎
1
1990年のイラクによるクエート侵攻から翌年の湾岸戦争における、関係国の恐ろしくも凄まじい外交情報戦について、各キーパーソンの挙措心情を克明に描くことで、生の実像を浮き彫りにしている。湾岸戦争は、紛れもなく世界外交対戦であり、日本も否応なくその渦中にあったが、超大国アメリカの思惑に翻弄されるばかりで、国会と政府はリーダーシップを発揮できず、霞ヶ関は省益に固執し不毛な対立に終始した結果、我が国は見事に敗戦国となった。この読後の何とも云えぬ忸怩たる思いを一体どうしたものか。ともかく本書は、途轍もない秀作だ。2010/02/02
咲庵@しあわせ運べるように
0
七年ぶりに再読。日本が湾岸戦争に際し、増税までして出した130億ドルはなんら効果をださず、支援先に感謝すらされなかった。圧倒的な証言数で湾岸戦争における日本外交の舞台裏を描いている見事な作品。2010/04/19