新潮文庫<br> 母なる自然のおっぱい

新潮文庫
母なる自然のおっぱい

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  • サイズ 文庫判/ページ数 294p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101318141
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

内容説明

知恵を伝達し、流布し、蓄積することに成功してホモ・サピエンスは自然から遊離してしまった。そこには奢りと淋しさが同居している―。その透徹した視座より、捕鯨反対運動、沙漠に造られたエコロジー実験施設、旅、冒険、風景などについて明晰な論理を紡ぐ。凡庸な自然讃歌でも感情的な環境保護思想でもない、極めて知的で創造的な自然と人間に関する12の論考。読売文学賞受賞。

目次

ぼくらの中の動物たち
ホモ・サピエンスの当惑
狩猟民の心
ガラスの中の人間
旅の時間、冒険の時間
再び出発する者
川について
風景について
地形について
再び川について
いづれの山か天に近き
樹木論

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

220
タイトルは軽やかなのだが、中身はどうして本格的なといってよい論考だ。いくつかの媒体に書かれた、自然に関するエッセイを集積したもの。いずれも、池澤の他のエッセイが抒情を滲ませているのに比して、ここに収められたものは、いずれも極めて論理的な思考回路において語られる。池澤の別の側面を見るようだ。読んで面白いのは「ガラスの中の人間」、そして池澤の人間観と自然観をもっともよく表明しているのが「旅の時間、冒険の時間」だろう。ここで語られる「時間の未知に隠されたことがら」が、まさに池澤の自然観の中核をなしているのだ。2015/06/20

chantal(シャンタール)

86
自然から多くの恵みを享受しながら、その恩も忘れて傍若無人に振る舞う人類。そんな人類への皮肉のような題名だ。この地球という存在は本当に奇跡なのだけれど。常に人と自然の在り方について思索している池澤さんらしい作品。肥大化したホモ・サピエンスは今後どこへ向かうのか?我々の祖先が樹上で生活していた頃、森の端から見た遠くかすむ山の風景に憧れたことだろうと言う。それなら私は間違いなくその子孫だ。角田光代さんが池澤さんを「理系の作家」と評していたけれど、こんな美文で語られたら私の理数系の成績ももう少しはマシだったかも。2021/04/10

翔亀

50
予想以上に本格的「人間と自然」論。文学者なので文学の話題かと思いきや、山/川/地形/樹木や登山/釣り/冒険を根源に遡って語り尽くす。根源とは、すなわち人間の根源。かつて哺乳類として、狩猟民として生きていた時の遺伝子に伝わる記憶を呼び起こすということだ。ホモ・サピエンスが近代化産業化によって回復不可能なまで失ってしまった"自然"を、本書は思い起こさせる。よくある理性vs本能とか単に自然に還れという図式を超える、深い洞察と未来への示唆に満ちている。私の内なる自然は、私を山へ登らせようとしているようだ。行くか!2015/05/21

おさむ

36
池澤夏樹らしい自然と人間の関係性を描く論考集。狩猟民族のDNA、旅や冒険への飽くなき欲望、山、川、樹木が人間にもたらす影響。自然に対し人間が謙虚に向き合うことの大切さを教えてくれます。1992年の読売文学賞。2015/12/12

James Hayashi

26
読売文学賞受賞作。著者が自画自賛しているタイトルだが、個人的には受け入れられない。しかし内容は濃く面白くためになった。自然と人間。 博識な著者から学ぶことは多い。久しぶりに尊敬する植村直己さんの事を思い出し涙した。再読必至。2019/09/24

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