感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoriction@感想は気まぐれに
16
四編の私小説。エッセイのようであり、そこはかとなく限りなく小説であり。「これだけはぜひ話しておきたいと思うことは、ちょっと隠しておく方が効果的です」「いかにものんびり書いているように見せるのがコツです」「こんな風に自慢らしく列べ立てましたが、果たして目的を達しているでしょうか」。存分に。北原武夫から離婚届を突き付けられ「ええ、好いわ」と答える。去ってゆく北原との別離にもあっさりとした場面。そこに「ちょっと隠し」た心情が見えた気がした。語らぬが故の北原への愛情。東郷への愛情。お千代さんの愛情、言葉は、深い。2013/07/29
うちこ
5
本家からの仕送りで生きるニートのDV父さんとその三人目の妻で自分と年齢が6歳か7歳しか違わない姉のような継母、 その子供たちと一緒に長女として暮らす様子が書かれている「悪徳もまた」の心理描写は驚くほど緻密。 共依存のメカニズムを自覚しながら演じることが常態化したような、この独特の双方視点が「おはん」を生み出したのかと思うとその自我の殺し方にぞっとする。血縁があろうがなかろうが、恨まず憎まないための工夫はマネタイズにありとでもいうような語りっぷりは西原理恵子さんとも似ていて、頼もしいを越えておそろしい。2018/10/30
Maumim
0
1999年8月31日読了。