内容説明
終身雇用制が崩れても、先輩・後輩の関係はなぜ変わらないのか?『タテ社会の人間関係』から50年超、著者がいま感じることとは?現代社会と向かい合うための、「タテ社会」入門書!
目次
プロローグ 日本の先輩・後輩関係
第1章 タテの関係とは?
第2章 タテ社会と「いま」
第3章 「タテ」の発見
第4章 これからのタテ社会
エピローグ 場は一つとは限らない
附録 日本的社会構造の発見
著者等紹介
中根千枝[ナカネチエ]
1926年、東京生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業、同大学大学院修了。のち、ロンドン大学で社会人類学を専攻。研究対象は、インド・チベット・日本の社会組織。東京大学東洋文化研究所教授、同所長等を経て、東京大学名誉教授。日本学士院会員。2001年文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
中根さんはまだご存命であられたのですね。私はこの本の素となった「タテ社会の人間関係」という本を学生時代に社会学、政治学の参考文献として読みこんだことを思いだしました。その本を現代に即して著者にインタビューしたものを編集部がまとめたものです。むかしとあまり変わっていない状況がよくわかります。附録の「日本的社会構造の発見」が参考になりました。2019/12/27
佐島楓
68
社会構造に注目し、分析した本。『タテ社会の人間関係』は未読だったが、大筋はつかめるようになっている。日本の社会は横の関係より上下関係を重んじる。確かにそれで説明できる部分は多い。現代社会のひずみも、小集団から個の社会に変化しようとしている現状に対応しきれないところから生じている。これはおそらく、世代の移り変わりとネットの善い方の力で変わっていけるのではないか。今は過渡期であって、一番苦しく生きづらいときなのではないか。2019/11/16
trazom
53
戦後の日本人論というと、山本七平さんの「空気」、阿部謹也先生の「世間」、丸山眞男先生の「無責任の体系」、土居健郎先生の「甘え」とともに、中根千枝先生の「タテ社会」は、非常に重要なキーワードであり、初めて読んだ時、大いに感激したものだ。その考えを「現代日本」に映したのがこの本ということなのだろうが、全く冴えない。非正規、雇用の流動化、女性進出、法令遵守、核家族、人口減少など、状況が大きく変わっているのに、何ともヌルい論考。中根先生93歳。著者名の下に小さく「構成=現代新書編集部」とある。そういうことか…。2020/01/17
さきん
41
自分としては、部活の先輩後輩、会社での期生という関係に違和感があった。本書はその違和感を階層社会なインド、イギリスに「場」な日本と対比させて、氷解させてくれた。「場」な社会においては、会社、学校、部活活動が舞台となる。その舞台への参加順が部長、担当等役職に加えて序列に大きな影響を与える。その「場」に早くから参加することが皆から認められるのに必要な条件。一方、インド、イギリスには「場」意識が薄いため、いきなり三代ぶりに村に入っても村人になれるし、同じ境遇な他人からのサポートを受けられる。2020/05/12
よっち
39
「資格よりも場」「序列意識」「ウチとソト」など、日本社会独自の構造を鮮やかに解き明かした「タテ」の理論。現代日本の抱える問題を「タテ」の理論を使って読み解いた一冊。長時間労働をもたらす小集団の封鎖性や非正規・正規雇用問題、新参者へのいじめやタテ社会のなかの女性の社会進出といった現代日本の問題を、本質的なところでは変わらない日本固有の「タテ社会」の構図から解説ししつつ、それが世界のグローバル化の影響によって変容したことで様々な齟齬が生じ、問題が表面化するようになったという説には説得力があるように感じました。2020/01/20