出版社内容情報
南の辺境から始まった中華再生のドラマ
太平天国、辛亥革命、国民革命そして長征
2度のアヘン戦争で叩きのめされ、日清戦争の敗北によって亡国の危機にさらされた清朝末期の中国。だが南からの風が瀕死の中国を癒す。太平天国・辛亥革命・国民革命および改革者たちという風。ラストエンペラー溥儀の数奇な運命と、中国史上はじめて南から吹き寄せた新しい時代の風が生み出す中華再生のドラマを描く。
菊池 秀明［キクチ ヒデアキ］
著・文・その他
内容説明
二度のアヘン戦争で叩きのめされ、日清戦争の敗北によって亡国の危機にさらされた清朝末期の中国。だが南からの風が瀕死の中国を癒す。太平天国・辛亥革命・国民革命および改革者たちという風。ラストエンペラー溥儀の数奇な運命と、中国史上はじめて南から吹き寄せた新しい時代の風が生み出す中華再生のドラマを描く。
目次
序章 南からの風―辺境からの中華再生の試み
第１章 「南からの風」吹く―太平天国運動と列強
第２章 ゆらぐ中華の世界―洋務運動と日清戦争
第３章 ナショナリズムの誕生―戊戌変法と義和団
第４章 清帝国のたそがれ―ラストエンペラーと辛亥革命
第５章 「民の国」の試練―袁世凱政権と日本
第６章 若者たちの季節―五・四運動とマルクス主義
第７章 革命いまだ成らず―第一次国共合作と北伐
第８章 内憂と外患のなかで―南京国民政府と満洲事変
第９章 抗日の長城を築かん―満洲国と長征・西安事変
第１０章 辺境の街と人々―香港・台湾そして上海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
24
アヘン戦争から日中戦争までを描く。著者が太平天国の研究者であるため、オーソドックスな叙述の中にも、太平天国の再評価が見られ、興味深い。全体を通してのテーマが「南からの風」、南方で起こった動きが首都北京に波及する構図になっていることを指摘している。著者は太平天国が近代中国が初めて体験した「南からの風」とし、その中国的なユートピア像は変法運動や毛沢東時代の改革に受け継がれたとする。中国近代史の概論としても面白いが、中国近代史の中で太平天国を捉え直した本として読んでも面白い。2020/11/24
MUNEKAZ
11
太平天国の乱から第二次国共合作まで。「南からの風」という視点を打ち出しており、中原から見れば辺境でありながら、同時に世界に向けて開かれていた江南地域から、新たな時代を開く潮流が流れ出たことを指摘している。洪秀全→李鴻章→孫文→蒋介石、そして毛沢東へと先を見通せない混迷の時代に、新たな中国を作ろうとした人々のドラマが大変読みやすく描かれている。より下からの見方として魯迅の生涯をところどころで触れているのも効果的で、文豪の日本への好感と幻滅、混迷の母国を思う焦燥と希望に胸を打たれるところである。良書。2020/05/03
sibasiba
11
太平天国が結構重要なんだな。「南からの風」という視点が新鮮。政治史が中心だが孫文・蒋介石の国民党が主で共産党についてもう少し突っ込んだ情報が欲しかった。張学良による蒋介石監禁と説得による第二次国共合作と抗日ナショナリズムの高揚は劇的で興奮するが、物語的過ぎて本当の所はどうなんだろうといくつか疑問が。題名に使ってるくせに溥儀の扱いが軽い。日本統治時代台湾の霧社事件や皇民化政策も興味深い。日本反戦同盟の存在を初めて知ったが反骨心旺盛な鹿地亘はカッコイイ。あとはやっぱり魯迅。2016/04/05
nori_y
6
太平天国の乱以降の近代中国について。洋務運動、戊戌の政変、義和団事件、辛亥革命……120％守備範囲外だった近代中国について、文系高校生レベルには追い付けただろうか。非常に分かりやすい筆致。2019/01/06
佐藤丈宗
3
清末の太平天国から西安事変まで。「南から」の視点を謳っているが、その点は少し活かしきれていない感じ。逆にいえば王道的なスタイルでキレイにまとめられている。官・民、軍人・文人、保守派、革新派問わず次々と登場する個性豊かな人物たち。日本の幕末維新にも遜色ない。中国近代史の概説書として非常に優れた好著である。残念ながらこのシリーズは版元切状態なので学術文庫などに収録して復活を望む。2017/06/13
