内容説明
1666年、ロンドンを大火が襲う。炎は「中世的世界」を焼きつくす。木造から煉瓦の街並みへ。終末論の終焉、そして「プロテスタント」国民の誕生。17世紀末、キリスト教世界最大の都市となるロンドンに、史上初めて「近代」が誕生するまでを描く。
目次
第1章 ロンドン炎上(大火前夜;ロンドン大火と明暦大火)
第2章 シティ再建―商都か帝都か(イーヴリンの見たロンドン;エネルギー革命がもたらした煙害 ほか)
第3章 ペストの終焉―「隔離」対「かがり火」(大ペストの脅威;市民たちのかがり火 ほか)
第4章 反カソリシズムの炎―宗教対立の時代(放火伝説を読む;十字架塔が破壊された日 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
8
1666年のロンドン大火がイギリス近代史に与えた影響を与えたかという考察を通し、17世紀とはどのような時代であったのかを考える。この大火をカトリック教徒による放火とする陰謀論の中で、大陸とイギリスの二項対立が形成され、それがイギリス国民の形成につながっていく、という。また、大火後の都市改造でペストが消滅したという伝説が生まれ、ペストの発祥地とされる非西洋社会への差別意識をオリエンタリズム論や世界システム論を踏まえて論じる。近代イギリス史を考える上で必読。2019/12/03
in medio tutissimus ibis.
7
1666年9月のロンドン大火に関する三つの伝説、即ち幻の都市計画、ペスト消滅、カソリックの放火を通して、当時のイギリス社会にあった王権と議会の、大陸と島国の、カソリックとプロテスタントの二項対立と、それらの対立を照らし或いは媒介する『火』のイメージについてを描く。ロンドンの都市史であり、病気史でもあるが、それ以上に宗教政治史であり、あまりよく知らなかったこの時代の、ペストとテロリズムと魔女狩りが同居する焼けつくような危険さを知れたことは収穫であったと思う。宗教対立については理解はできても実感がわかなかった2018/08/01
monado
2
1665年のロンドンのペスト禍、そして1666年のロンドン大火を中心におきながら、その前後にからんだ3つの伝説を検証してゆく。 幻の都市計画、ロンドン大火によるペスト浄化、カソリックによる放火説、である。 この背景に、イギリスの急速なエネルギー革命があったという話が大変面白い。 また補論として、ペストがネズミを経由して伝染するというのは実は文献的にも検証できないという立証がある。2019/02/02
○△
1
イギリスがヨーロッパの片田舎から世界都市となった時期とロンドン大火の時期は重なる。同時期に起こった明暦の大火と死者数が大幅に違う理由、復興による都市開発の紆余曲折が詳しい。2012/06/03