講談社文芸文庫
無限抱擁

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  • サイズ 文庫判/ページ数 261p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061984134
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

男と女が出会ったのは吉原。春に出会い晩秋に別れた。それから三年目の春、二人は再会する。そしてその年の冬、男は求婚し結婚した。…出会ってから六年目、一月に雪、二月の或る朝、女は息を引き取った。血を吐き死んだ。―著者のストイックな実体験を、切ない純粋な恋愛小説に昇華させ、「稀有の恋愛小説」と川端康成に激賞された不朽の名作。日本近代文学史上屈指の作品。

著者等紹介

滝井孝作[タキイコウサク]
1894・4・4~1984・11・21。小説家。俳人。俳号折柴。岐阜県高山の生まれ。1914年上京、19年河東碧梧桐の紹介で時事新報社文芸記者となり、芥川龍之介を知る。25年志賀直哉の滞在する奈良へ移る。35年芥川賞創設、選考委員となり第一回選評を書く。59年芸術院会員となる。著書に『野趣』(読売文学賞)『俳人仲間』(日本文学大賞)など
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感想・レビュー

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げんがっきそ

5
かけがえのない人を失った悲しみ、その人への愛しさは整理がついた時に分かる。無二の思い出が自分の中に出来ていることに気付く。思い出の中で生き続けるだろう欠け替えのない妻へ、無限抱擁する。と、作品を説明すればウソになる。 無限抱擁という題は、いかにもロマン的で作者の個人的な感傷を含んでいると私は思ったのだ。何故ならこの種の小説は感傷を誘うものが多い。また人がそれを求めるのもある。しかしこの作品は恋愛小説の骨格といえる同情を、誘わせない。一貫して客観的で冷めた描写。恋愛小説たる資格を剥奪された不思議な恋愛小説。2019/05/16

フリウリ

4
最近しばしば瀧井孝作の名前にあたっていたので、何十年ぶりかで読む。恋愛小説なのだけど、亡妻の母との(きわめて面倒な)関係性などにも触れていて、少なくとも自分が幼かった頃とは違う目(頭?体?)で読んだ。瀧井の師匠は11歳年上の志賀直哉で、本作にも「我孫子の友」として重要な場面で、重要な忠告を与えている。瀧井は志賀を追って我孫子へ、奈良へ引っ越しもする。瀧井は芥川賞の選考委員を初回から47年も務めていたが、要職を拒む志賀直哉の代理であったかもしれない。それほど志賀に信用される人物であったのだ。傑作。92023/03/26

いなろ

1
『旅する練習』から。序盤は読みづらく感じたが、読み終えると読んでよかったと思った。解説にもあった通り、家というしがらみの中に埋められ、そこでの自身の役割を意識せざるを得なかったからこそ、感傷に流されずに客観的に若くして亡くなった妻との記憶を書けたのだとしたら、しがらみの減った現代で、亡くなった大切な人を感傷に流されずに書くには、より一層の書き手の忍耐が必要とされるだろう。 「信一は又松子の薄い表情から、一人の生命の薄れる場合傍に従いて行けない其道程が、感じで漸と分かるようにもなった。」2020/11/26

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