講談社文芸文庫<br> 寂兮寥兮(かたちもなく)

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講談社文芸文庫
寂兮寥兮(かたちもなく)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 189p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061983830
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

幼なじみの万有子と泊は、ごっこ遊びの延長の如き微妙な愛情関係にあったが、それぞれの夫と妻の裏切りの死を契機に…。ふたりを軸に三世代の織りなす人間模様は、過去と今、夢とうつつが混じり合い、愛も性もアモラルな自他の境なき幽明に帰してゆく。デビュー以来、西欧への違和を表現してきた著者が親炙する老子の思想に触発され、生と性の不可解さを前衛的手法で描いた谷崎賞受賞作。

著者等紹介

大庭みな子[オオバミナコ]
1930年生まれ。1953年3月、津田塾大学を卒業。1968年群像新人賞になった「三匹の蟹」が『群像』六月号に発表され、第五九回芥川賞を受賞。1975年9月、『がらくた博物館』で女流文学賞を受賞。1982年10月、『寂兮寥兮』で谷崎潤一郎賞を受賞。1986年12月、『啼く鳥の』で野間文芸賞を受賞。1989年6月、「海にゆらぐ糸」で川端康成文学賞を受賞。1991年2月、『津田梅子』で読売文学賞を受賞。12月、芸術院に入会。1996年4月、「赤い満月」で川端康成賞を再度受賞。2002年4月末、勲三等瑞宝章を受勲。2003年11月、『浦安うた日記』で第一三回紫式部文学賞を受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パフちゃん@かのん変更

41
瀬戸内寂聴さんの『いのち』を読んで大庭みな子さんに興味を持った。『寂兮寥兮 』は「混然として在り、万物がそれによって成る天地の以前からあるものは、形もなく、何者にも依らない」という老子の言葉。作者曰く「人を生きることに、書くことに衝き動かしているものは何かという、書き始めたときから自分の根底にあった問いが、この作品となって現れた」らしい。物語だがはっきりした筋もなくどこを目指して進んでいくのか分からない。父や母、兄弟や血族、男と女、結婚や夫や子供の話。う~ん、もういいわ。2018/06/25

S.Mori

20
万有子と泊の不思議な関係を描いた小説。二人は幼馴染でしたが、夫と妻を亡くしてから男女の関係になります。二人のこの関係を軸に時間と空間が入り乱れた幻想的な物語が描かれます。読みやすいとは言えないし、グロテスクな場面もあるのですが私が今年読んだ小説の中でベストの一つです。特に夢や神話の世界が現実の世界とつながるところが好みです。さらに後半では現実と小説の世界が混ざり合います。万有子が嫉妬や憎しみといった感情を超えて、死んだ自分の夫を赦して、懐かしく思い出す場面に、漂っているほろ苦さと優しさが心に沁みました。2020/07/20

ソングライン

9
幼少期、隣に住む兄弟と遊ぶ主人公は初めて性的な目覚めを二人に感じます。大人になり、別の男性と結婚した主人公に、夫と燐家の弟の妻が、ある日不倫旅行の先で事故にあい死亡するという大事件が起こります。死んだ二人への嫉妬、怒り、憎しみといった感情なく、残った弟と暮らす主人公。生に執着することなく漂うような生き方を、寂兮寥兮(かたちもなく)と作者は表現したのでしょうか。嫌悪感はなく、しかし共感もなく、不思議な読後感です。2018/11/07

sabosashi

7
読み始めて人物関係の把握に困難さを感じて、しばしそのままにしておいたものの、この著者はやはりきちんと読みこなしたいと再考し、やはり容易ではなかったが、読み通す。  あるいは綴り方にも問題があるのかもしれず、すくなくとも名文ではないかもしれないが、ここまで来てそんなことでぶつぶつ呟いても仕方ない。  わたしたちはブルジョア社会での決まり事にあまりにも縛られている。屈服せざるをえない。しかしそれでも奔走してしまうひとはいて、村八分とかにもあったりする。行きすぎれば、犯罪者である。  2021/10/07

お萩

5
形がないからこそ意識してしまうカタチというものがあって、それは誰かの気持ちの拠り所とか幼い時のアンモラルな衝動とか好き嫌いで分けられないくすんだ気持ちとか薄っすらとかかる死の気配とか。。そういうものを丁寧に書いていて、ただあまり新鮮味はなく、特に私の苦手な不倫が出てきたのでなんだか読むのが遅かった。万有子の「自慢する人に会うのが一番楽で怒っている人に会うのが一番疲れ、お世辞をいう人が一番退屈し、好奇心のある人が一番面白かった」には激しく同意。2015/06/30

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