内容説明
既成の通念を乗り越えようとする果敢な試み―言葉の生命力を生かして、新しい文学表現の可能性を追求した十二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
31
怪談のような怖さのある短編が多い。きちんと拝読したことのない作家の方の作品もあり、機会を作って読んでみたい。しかしこんなにアクロバティックな発想をお持ちの方ばかり、自分は修行が足りてないです。2015/05/21
メタボン
25
☆☆☆ 小島信夫・馬、藤枝静男・一家団欒、筒井康隆・遠い座敷、吉田知子・お供え、は既読。他印象に残ったのは、家族のものが何故か箪笥の上で正座して過ごすことが能登言葉で語られる半村良・箪笥、将軍実朝の命で建造されたが一度も航行することなく座礁した大船と天平美人が描かれた緞帳の物語澁澤龍彦・ダイダロス。2022/09/25
田氏
20
何十年前の風を触感したり、その音そのものを聞くことができないのと同じで、これらの書き手が踏みわけ入った「冒険」そのものを体験することはもうできない。とも思うが、文学に一家言あるわけでもない自分にとってはそこそこの冒険であることに変わりない。だから安部公房も澁澤龍彥もみずみずしいし、ポストモダンがいくら懐古のことばになろうとも高橋源一郎はモダンよりポストだし、笙野頼子はアヴァンであり続ける。ゆえに古本屋の投げ売りを漁っては、こうして踏み固められた道を冒険している。新刊を買い集めるには懐が心許ない、ともいう。2021/08/11
ヒダン
11
村上春樹著『若い読者のための短編小説案内』で取り上げられている小島信夫の「馬」のみ読了。女の尻に敷かれてる男が自宅を勝手に改築されて馬と同居するはめになるという筋なのだが、なんとも不思議な話だった。2015/01/26
おおかみ
11
容易には理解し難い、奇矯で厄介な短篇集である。“逸脱と革新のエネルギーを、むしろあるべき文学の正統と位置づけたのが日本の戦後文学であり、世界の二十世紀以降の文学だった(「解説))”とあるが、それにしても前衛的で悪夢的。歴史に叛逆するかのごとく描かれる<家>の姿やパロディは不安定な時代を象徴しているのだろうか。小島信夫「馬」、安部公房「棒」、筒井康隆「遠い座敷」、澁澤龍彦「ダイダロス」、笙野頼子「虚空人魚」が強く印象に残る。2011/02/24