講談社文芸文庫<br> 足摺岬―田宮虎彦作品集

講談社文芸文庫
足摺岬―田宮虎彦作品集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 286p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061976795
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

死を決意した学生の「私」が四国で巡り合った老巡礼との邂逅、その無償の好意で救われる表題作「足摺岬」、新聞配達少年との心の通い合いと突然の死を伝える「絵本」、敗北する小藩の命運を書く「落城」、初期秀作「霧の中」他。人間の孤独な心に寄りそった、優しい視線の作品世界。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

YO)))

24
エクストリームな孤独・孤絶を追求した作品ばかりで非常に重たい。幕末~明治を生来の敗北者として過ごし、仇敵不在の中を昭和まで生き抜いた(果たして「生き抜いた」と言えるのだろうか?)或る男の生涯、『霧の中』。新政府への恭順を良しとせず無謀な抵抗を試みる小藩の凄絶な滅びの美学、『落城』。自殺するために足摺岬を訪れた「私」と老いた遍路との孤独の共鳴、『足摺岬』。この作品にだけは-死ぬ気を削がれる、というような、後ろ向きなかたちではあるにせよ-救いというものが存在する。2013/11/30

michel

21
★4.0。他の岬じゃダメだ、「足摺岬」でないと。石つぶてのようなはげしい横なぐりの雨音、荒波のひびき。その情景が、死と対面する主人公の心情を荒々しくも深く映し出す。生きる苦しみから自殺行に足摺岬を訪れた主人公は遍路のとことん深い優しさや薬売りやお内儀の思いやりに触れ、やがて自死の理由を雨霧に消していく。八重の涙に理由なく生きる苦しみを受け入れた主人公が、最後には遍路の「夢だ」の意味を理解する。ーーどこに夢でない真実があるのか。ーー荒波と横なぐり雨…始終、暗闇の底のような陰鬱な作品だか、味わい深かった。2019/04/26

ステビア

14
滅びの美しさ、生きることの虚しさ、という感じかなぁ。五篇収められている私小説(らしきもの)がよかった。暗くて感傷的で、こっちまで泣きたくなる。小説として非常に巧みだと思った。2014/06/30

さとむ

7
会津生まれの会社の先輩がつぶやいた…「長州と薩摩だけは許せネェ」。独自のイントネーションがおかしく、酒の場でもあったので受け流したが、戊辰戦争に主題を置いた本作前半の3編を読んで、あれは本心だったのだなと思った。うってかわって、私小説かと思わせる後半の4作は貧しさや父親との葛藤を背景に、人生における苦しみ・悲しみがしんみりと描かれ、何ともせつない気持ちになった。2014/02/15

hirayama46

4
はじめての田宮虎彦。うむ、好き……。悲惨と言ってもいい人生をいかに生きるか、と考えているうちにどんどん煮詰まって考えすぎてしまい、登場人物たちをどうしようもない状態にまで追い込まれる物語しか残らなくなってしまったような、そんな短編集でした。あくまでもセレクションなので、もっと明るい作品も書いているのかもしれませんが、やはり基調に無常観に近いものはあったのではないかな、と感じました。2021/08/18

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