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講談社文芸文庫
誘惑者

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  • サイズ 文庫判/ページ数 375p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061963443
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

噴煙をあげる三原山に、女子大生が二人登っていった。だが、夜更けに下山してきたのは一人きりだった。ちょうど一カ月前にも、まったく同じことがあった。自殺願望の友人二人に、それぞれ三原山まで同行して、底知れぬ火口の縁に佇たせた自殺幇助者鳥居哲代の心理の軌跡を見事に辿り、悽絶な魂のドラマを構築した、高橋たか子の初期長篇代表作。泉鏡花賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mii22.

53
私はどうしてこの恐ろしい闇のような本を繰り返し読むのだろうか..。「あなた、なぜ、死ぬの」自殺しようとする友人に問いかける女子大生。死の構造が知りたい。死にゆく友人に同行し、三原山火口に佇む自殺幇助者、鳥居哲代の心の闇を覗き見たくて好奇心で読むのかも知れない。そして、またいつかこの本を手にすることを確信するわたし。2018/01/24

misui

12
昭和はじめの三原山火口への投身自殺事件をモデルにしている。主人公が二人の女性を自殺に導く過程、その心の動きが暗い海や火山として表現されており、一時も明るさのない中を物語は進む。キリスト教的な含意もあるようだが悪魔的な話で、ゲストに澁澤龍彦も出てくる。火口に飛び込むことが深層世界で神と邂逅することかといえば自分はまったくそうは思わないし、火口に火はなくガスや衝撃で死ぬという点、モデルになった人物は二人を見送った後ほどなく死んでいる点など、精神世界に振りきれず、でも、そうだとすると本当にやりきれない。2016/06/06

ひねもすのたり

11
先日『終わりの日々』を読んだので久しぶりに再読してみました。 本書は1933(昭和8)年、三原山で起きた実践女学校自殺事件をモチーフとしています。 事件の経緯と、二度にわたり友人の自殺に立ち会う女子大生の心理を巧みに描きます。 純文学的なアプローチも可能な作品ですが、全編に漂う不穏な心理描写と静かに魂が鬩ぎ合うさまは最高にスリリングです。 思えば初読みから四半世紀が経ちます。小説を読むことに関して多少なりとも擦れたようにも思いますが、本書に関しては抗う術を持ちません。今回も見事に飲み込まれてしまいました。2014/05/09

桜もち 太郎

9
京大生の鳥居哲代。二人の友人を三原山火口へ誘われ誘う。自殺。「死の磁場が三人の近づき合いの地盤だったのかもしれない」 死の構造とは何か、なぜ死にたいのか、本当は哲代の思いなのか。二人の願望者を通して紐解いていく哲代。悪魔学を研究する松澤に会い800°に熱せられたパイプを押し当てられる哲代。悪魔の烙印を押されたように。火口での描写はとにかく吸い込まれ、自身が自殺願望者になった気になる。三人目の願望者が自分であったらと考える。抵抗なく誘われ行くような気がする。圧倒的な筆力だった。2015/08/01

こたろう

9
[再読]高橋たか子さんの訃報を聞いて本棚から出してきた。学生の時、ゼミで取り上げられて衝撃を受けた一冊。友人二人の三原山火口への投身自殺を見届けた女子大生の、死の構造を知りたいと願う深くて底の見えない心の内がひたすら語られる。彼女がなぜ自殺幇助に至ったのかという重い内容であるにも関わらず、淡々として乾いていて静かで美しくさえある。他者の内部にあるもの、自己の内部にあるもの、目に見えないものに目を凝らす強い意思に畏怖さえ感じさせる物語。意味不明な書き込みや、当時感じた気持ちも蘇ってなんだか楽しかった。2013/07/21

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