内容説明
鳥のように自由に獣のようにしたたかにしなやかな瑞々しい二十代の精神を、鋭く真摯に刻む第一文芸エッセイ集。血へのこだわりを示す「紀州弁」「母系一族」をはじめ、「働くことと書くこと」「作家と肉体」「雪と『獣』」「犯罪者永山則夫からの報告」「読書ノートから」「小説の新しさとは何か」などを三部構成で収録。
目次
紀州弁
母系一族
萎びた日向くさい南瓜
処女の秋刀魚
鳳仙花の母
男に結婚の決意などいらない
火宅の雪
土のコード
町よ
働くことと書くこと
犯罪者永山則夫からの報告〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mishima
39
「岬」で芥川賞を受賞後半年あまりの1976年刊行。。これまでのエッセイをまとめたものという成り行き。以前、ムックにて村上龍、ビートたけしとの対談を目にしていたが、あちらは晩年に近かったのではないかと記憶を辿る。こちらはまだまだ尖った中上がいる。「19才の地図」が立ち上がってくる。印象深かった点が二つ。「犯罪者」の捉え方。「異邦人」を引き合いに出した考察はわたしにはしっくりきた。もう一つは「批評」について。彼の「事実」という言葉に暗示された多くのことは想像するほかはないが「事実」が彼の作品を生んだのだ。2015/12/14
hiratax
4
読んではいるはずだがすでに10年以上前のことであり、新しい体験として読む。読了したのは光州である。周遊きっぷでソウルから新幹線で向かい、光州事件の墓地を訪ねようと、518番(事件の日付)のバスで向かった場所が記念館で、墓地は反対方向にあるからと翌朝起きて、1時間ほどめぐり戻ってきたところだった。その後、ソウルへ戻り、6年前に出会ったバンド出演のライブへ向かうも、向こうはこちらを覚えていなかった。そういうものだろう。2016/11/05
Yuto Matsushita
1
宇沢弘文が構想した羽田空港、あるいはいまその隣にあるクロノゲートに、中上健次がいるように思うと不思議な気がしてくる。2022/06/25