内容説明
女形の旅役者の悲哀をチェーホフの同名の戯曲の哀愁に重ね、二日酔の“私”の気分を巧みに描く「白鳥の歌」。近視の武士の苦衷を、武張った信玄、謙信の姿とともに描く哀しくもおかしい「貝の音」。「下足番」「開墾村の与作」等。殉死の弊風、封建の桎梏、人間の嗜好・執着、浮世の儚さ―。人の世の悲喜劇への常に変らぬ確かな眼差と限りない愛情が醸す、井伏鱒二の豊穣の世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
101
ユーモアと哀愁と人間的な温かみを感じる素晴らしい短編ばかり。かなり可笑しい話もあるのだが、控えめに書かれているので落ち着いた印象を受ける。「小熊の夜遊び」はSF的な内容で、こんな作品も書けるのかと嬉しい驚きを感じた。古墳時代と夜更けの酒場がつながってしまうところが滑稽だ。「病中所見」は真面目な題がついているが、笑える内容で結末に漂う笑いとペーソスが好きだ。プロットが一番面白いのは「釣場」。後味も良い。結婚式に招かれた人たちのスピーチが本当に可笑しい。2017/08/21
ナツ
1
長編とはまたひと味違う感じで面白かった2013/06/06
王天上
1
「小熊の夜遊び」が変でよかった。こういう洒落た作品も書いていたんだなあ。2012/10/23
eazy
1
「シグレ島叙景」が可笑しかった。 ほとんどつげ義春作品の会話ですね。 「むげいの家のおとっつぁはきぐしねくてやんだおら」ってやつ。2002/03/15