内容説明
武士道の聖典ともいわれてきた『葉隠』には、なぜか「殉死」の語はなく、すべて「追腹」であり、「武士」の語の多くが「奉公人」に変えられている。また『葉隠』の存在は、実は江戸時代を通じて秘せられてきた…。山本常朝の生い立ちと思想を深く読み込むことによってこれらの謎を解き、さらに、通説を大胆に問い直した著者会心の力作。
目次
序章 『葉隠』と山本常朝
第1章 奉公哲学
第2章 曲者列伝
第3章 家老論
第4章 没我的忠誠
第5章 傑僧外伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
29
死を強調しているイメージがありますが、内容はそうとはいえず、かなり人生訓てしてまとめられていると思います。書かれた当時と時代が異なっても今に通じる話が多いので参考になりました。2023/05/16
kawamata
16
江戸時代中期に武士の心得を書いた『葉隠』を解説した本。『葉隠』は佐賀鍋島藩士・山本常朝の語りを、田代陣基が書き留めたものとされる。サラリーマン化した当時の武士に、武士としての心の在り方を説いている。「死ぐるい」「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」など、一見『死』を美化しているようにも思えるが、実は自分の生死より『大切なものを見失うな』とか、死を恐れるあまり『自分のなすべきことを怠るな』とかの意味合いが強い。葉隠が正道だったのかは疑問だが、自分が何を最も大切にして生きていくかは見失わないようにしていきたい。2017/08/15
紫暗
6
「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」で有名な「葉隠」の解説書です。本文がまとめて記載されている部分はないので、本文をしっかり読みたい方は他の本を読んだ方がいいかと思います。内容としては「葉隠」の中から著者が重要と感じた部分や、印象的だった部分を抜粋し、書かれた当時の状況や著者の立場などを踏まえながら解説してあります。ただし、「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」という一言からは想像しがたい、奉公人としての武士の在り方の解説ですので、少々想像とは違う内容となる人もいるかもしれません。2010/11/21
monotony
5
「葉隠」そのものを読んでみたくて、タイトルと出版社を信頼して買ったのだが失敗。葉隠の一部を引用しながら著者の解釈・解説を加えるというスタイルのため、葉隠そのものが読める本ではありませんでした。一応は目を通してみたけど途中で疲れました。この本は別の本で全体像を把握してから読むほうがいいと思います。最初の一冊では無かった。。。2016/01/30
でん
4
かつてのように戦場で活躍することができず、追腹も禁じられ死ぬこともできなくなった時期。かつての戦国武士の有り様「武士道」に強く影響された常朝の、それに対する憧憬を「見事な生を送る」に変化させ、それに対する衝動を当時の状況に適合させ捻じ曲げて理論化した「奉公人道」に関する書物。確かに見事ではあるが、常朝の考える「見事な一生」を送るには江戸時代は難しく、生まれる時代が違ったならばここまで彼は苦しまなかったのだろうと思う。2015/01/30