内容説明
長いあいだ聖人として崇められ、それ故にまた旧時代の権威として批判の対象ともされてきた孔子。歴史の粉飾を払い、聖人ではなく血の通って孔子の人間像を鮮明にするため、著者は『論語』の再編を試み、また「孔子観の変遷」という独自の観点から、彼の思想の展開を追究する。新しい「人としての生きかた」を提唱し、それを自ら学びつつ実践する努力を続けた人間孔子の魅力を描いた最良の入門書。
目次
1 孔子の思想(孔子像の原点;どれだけが真実か;道徳と政治;仁と礼の思想;孔子にとっての天)
2 孔子の生涯とその時代(春秋末期の中国;孔子の生涯)
3 新編『論語』(孔子の人がら;孔子のことば;孔子と門人;門人のことば)
4 伝承と展開―孔子観の変遷(儒家集団の発展;異派における孔子像;大聖となった孔子;孔子批判;日本における孔子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
兵士O
15
儒教は僕の中では不思議な教えです。史記を読んでいた際に、漢の劉邦が項羽との戦いの最中には儒家の連中のことを小馬鹿にしていて、その帽子に小便をかけていたのに、建国後は秦を寝返って劉邦に仕えるようになった叔孫通という儒者を使って、盛大な皇帝就任凱旋式を行い「俺は皇帝になったんだ」としみじみ述懐するシーンがあり、こんな体系の元を作った孔子ってどんな人物なんだろうと思っていました。金谷先生は孔子のことを温かく好意的に書いていますが、現実的に押さえるべき点もきっちりしています。なぜ支配階層の教えになったのか、とか。2022/09/08
お茶
4
「中国の歴史をふりかえって思うことは、この国はやはり政治優位の国だということである。哲学も宗教も芸術も、それぞれの領域をまったく持たなかったというのではないけれども、強い政治力に従属するのがふつうであった」加地伸行も、西洋哲学では物事が何であるかは精緻に分析できるけど、東洋思想みたいにどう行動すべきか、は教えてくれないみたいな事をどっかで書いていた。日本の政治家も高島嘉右衛門みたいなお抱えの易者を持っているらしいし、サラリーマンでも論語を読む。どう生きるべきか分かり易く教えてくれる、孔子入門に最適でした2015/03/31
RK59320
4
論語が書かれた春秋時代がどんな時代だったのかがわかれば、一つひとつのメッセージが、誰に向けて、何を伝えたかったのかを思いながら、より深く読みこむ事が出来る。本書は、メッセージを掴む為のヒントになる、時代背景、言葉の意味、孔子の生涯等がわかり易く解説されている。一つのメッセージから、いろいろな意味合いを読み取れるように論語を更に深く読み込むための参考にしたい。2014/05/11
荒野の狼
3
孔子の思想と歴史的な生涯を書いた最も重要な資料は論語と史記とされています。多くの思想家・宗教家を理解するには原典をあたるのが往々にして一番ですが、こと孔子にいたっては論語は系統立てて書かれておらず、しかも短い句に深い意味がこめられており、解説なしには難解です。また、史記も伝説が含まれていることは知られています。一方、孟子や荀子にも孔子の理解に不可欠な一級資料があります。本書は、そうした諸本に熟知した筆者が、歴史的孔子像と後世になって作られた孔子像をあきらかにしていきます。2009/09/22
北六
3
孔子は支配・被支配階級の存在には疑義を挟まず,礼を重んじていかによく生きるか,いかに国を治めるかを語る.礼とは,対人関係を円滑にするための,伝統に裏打ちされた行動様式の結晶.論語は宗教でも哲学でもなく,純粋によく生きるための実践書.2012/10/31