内容説明
本書は、それぞれ「について」をともなう25章から成り、テーマ・文体において変容し、重なりあう、いくつもの糸が、切れるかと見えながら勁い糸でつながれている。この壮年の書は、短歌、小説、評論の諸領域に及ぶその後の氏の言語的営為のほとんどを胚芽として含む。詩による人生論の試み。
目次
老年について
壮年の位置について
無為について
裸体について
好色について
ナルシスについて
愛と死について
女性について
情熱について
書について
変身について
記憶について
演劇とスポーツについて
ヒューマニズムについて
神について〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
21
「~について」という表題からなる全25章は歌人:上田三四二(大正12年~平成元年)の思考の足跡。それは私に女体を思わせる不思議な文体。時折あらわれる断定の口調が心地よい響きとなって私を酔わせるのです。2015/07/10
飴猫又山
0
難解だが端麗な文体2019/09/08
久美
0
何度も読んだし、何度も読み返すだろう。高校生の時、ここに収録されている「廃墟について」を国語の模試の問題文として読んだのが上田三四二との出会いだった。あの時の衝撃は今も忘れられない。土の下、花に囲まれて眠りつづけるという幻想、墓碑銘へのささやかな抵抗。肉親の死という悲しみをどのように受け入れるのかということに対しての、ひとつのかなしく美しい回答。2018/01/07