内容説明
クルアーンは語る、神と使徒と共同体の根本原理と、その実践。イスラーム理解が拓く、世界への新たなる視点。
目次
序 「イスラーム」の発見へ
第1章 新しい宗教の誕生
第2章 啓典と教義
第3章 共同体と社会生活
第4章 第二の啓典ハディース(預言者言行録)
第5章 知識の担い手たちと国家
第6章 神を求める二つの道
第7章 スンナ派とシーア派
第8章 黄金期のイスラーム世界
第9章 現代世界とイスラーム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
33
★★★★★ 面白いかつ分かりやすい。さらには中立的立場からイスラームを論じているので中田考のように極端にイスラームの立場から論じるのでもなく、よくある日本人視点からのなんちゃってイスラーム論でもない。あえていちゃもんをつけるとすれば東南アジアのイスラームについての記述が極端に少ないことだが、さすがに酷だろうから目を瞑る。 イスラム教は最初から国家を持っていたわけで、キリスト教とはその時点でかなり形態が違う。「「発見」」—異文化に接するときにはそれが大事である。」まさに異文化を理解するためには発見が大事だ。2021/10/11
俊
26
イスラームの全体像を概説した入門書。ムハンマドの生涯や正統カリフの時代、クルアーンとハディース、スンナ派・シーア派、六信五行等のイスラーム理解の要点を平易に解説している。「イスラームは国家を持って生まれた」という見落としがちな事実に気付けたのが個人的に嬉しい。原理主義に関しては少し触れる程度なので物足りないけれど、それ以外は概ね満足のいく内容だった。古さを感じさせない良い本だと思う。 2015/02/14
林 一歩
24
無神論者なので、逆に所謂三大宗教ってのを並列に捉える事が出来るのが個人的な強みだと思っている。教義としてみればバランスのとれた筋の通ったものだとの個人的な認識。原理主義の極端な事例がクローズアップされ過ぎているのではなかろうか。くどいようだが、あくまで個人的な認識。2014/05/07
河瀬瑞穂@トマト教司祭枢機卿@MMM団団長
15
とても解りやすく、系統立てて「イスラーム」を紹介した一冊。歴史の概略を軸に今に至る姿を解説しているので理解がしやすい。世界史年表を参照しながら読むとさらに解りやすいか。「戒律に縛られた、完成した宗教」ではなく、更なる成長をしうる柔軟な宗教なのだろうと、この本を読んで現時点では私は感じました。うん。知らない文化をすこしづつでも知れるというのは素敵で素晴らしい、心地いい、嬉しい。大掴みとしてはよい一冊なのではないでしょうか。2012/07/31
maki_kus
14
京都大学のイスラーム研究者による1994年の著作。新書版ですが読み応えのある良書です。歴史的な時系列でイスラームの成立、教義、社会規範、スンナ派とシーア派などの分派等につき詳細に記述しています。特に現代における諸問題(オスマン帝国崩壊に根をもつ旧ユーゴやバルカン半島の民族主義的問題の勃興、パレスチナ問題など)について鋭い考察を示しています。イスラームが同じセム的一神教の系譜のキリスト教やユダヤ教と異なるのは、成立が最初から都市国家であり政教一元的な性格があり、力を希求する動機が強い点にあると理解しました。2015/11/03