内容説明
歌舞伎は、デフォルメされた化粧や衣裳といった非日常的な要素をもちながら、観客にリアリティを感じさせる不思議な世界である。舞台の上で白拍子花子を演じる歌右衛門は、あくまでも歌右衛門という役者個人でありながら、観客の目の前で白拍子花子その人になり、女そのものになる。リアリズムを追求する近代劇の「演技」とは全く異なる歌舞伎の「芸」の本質を、江戸時代の役者の芸談と生き方に探る。五十人の役者の姿を生き生きと描きながら、「芸」の体系化を試みる、秀逸の歌舞伎読本。
目次
「芸」とはなにか
名女形の視線―杉九兵衛
敵役のいじめ―山中平九郎
豪奢な食膳―坂田藤十郎
古人の三幕―竹島幸左衛門と二代目嵐三右衛門
女形の教訓―山下京右衛門
女形は顔ではない―荻野沢之丞
敵役の眼―初代片岡仁左衛門
荒事の魅力―初代市川団十郎
遊びごころ―初代中村七三郎〔ほか〕