内容説明
それは、硫黄島で戦死した日本兵の遺品であるひとたばの手紙を、アメリカ人の一女性から託されたことから始まった…。一少女として経験した戦争体験を綴るとともに、俳人たちが戦争といかに向き合い、いかに詠んだかをつぶさに検証する。風化させてはならない戦争の記憶を、俳壇を代表する女性俳人・宇多喜代子が、渾身の思いを込めて次世代へ語り継ぐ。
目次
シー・クリフの町で
竹槍訓練
大詔奉戴日
十二月八日
父の出征
出征兵士と俳句
戦争俳句
戦争と機会詩
素逝・赤黄男・桃史
長谷川素逝〔ほか〕
著者等紹介
宇多喜代子[ウダキヨコ]
昭和10(1935)年、山口県生まれ。「獅林」(主宰・遠山麦浪)を経て、「草苑」(主宰・桂信子)創刊とともに入会、長年編集長を務める。平成17年「草苑」が終刊し、現在は「草樹」所属。第29回現代俳句協会賞、第35回蛇笏賞を受賞。平成14年、紫綬褒章受章。平成18年より女性初の現代俳句協会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かふ
20
題名は太平洋戦争に従軍したアメリカ人がある島で日本軍の手紙の束を持ち帰り、それを後に著者に託して宛先の家族を探したという話がプロローグとエピローグ的に語られる。中心は「戦争俳句」についての本だが、著者は軍人一家であったので祖父の時の日清・日露戦争では子規や鴎外の俳句紹介している。著者は終戦は9歳の時で父が戦地から手紙をもらって、戦地の父と戦争俳句を重ねている。それは父が中国人の首を刎ねたかもという銃後の不安を抱えながら戦争という機会(時代に影響を受けた表現)に作られた俳句をまとめた。2020/10/21
やま
14
ひとたばの手紙は硫黄島に残された手紙だった。アメリカでそれを受け取った著者が自身の敗戦日は9歳だったという戦争体験、そして戦争中における俳句について語る。◇12月8日の宣戦布告における俳人たちの高揚ぶり。一方で前線での片山桃史の句、新興俳句、京大事件、戦火想望俳句(想像の範囲の俳句なので事実がない)、虚子のことなど一言ではまとめきれないほどの内容である。◇8月15日に9歳の著者すら「こんなはずはない」と思ったという。一般の人を含め多くの犠牲を払って終結したこと、戦争は駄目だという著者の思いを受け取った。2022/05/29
双海(ふたみ)
14
それは、硫黄島で戦死した日本兵の遺品であるひとたばの手紙を、アメリカ人の一女性から託されたことから始まった…。一少女として経験した戦争体験を綴るとともに、俳人たちが戦争といかに向き合い、いかに詠んだかをつぶさに検証する。風化させてはならない戦争の記憶を、俳壇を代表する女性俳人・宇多喜代子が、渾身の思いを込めて次世代へ語り継ぐ。(カバーより)2014/06/02
馨
10
戦時下に詠まれた俳句といえば軍人の方の辞世の句ぐらいしか知らず、有名な歌人の方が詠まれたものがあるなんて知りませんでした。なるほど戦時中の作品だけあって教科書には1つも載っていないものばかり。戦場に往かれた方、空襲や出兵を体験した人、特攻、当時を生きた人でないと詠めない胸を打つ句が沢山ありました。また男女では全然立場が違うので詠み方も違うなぁと思います。2014/07/21
啄木鳥
3
普段俳句、詩を読むことはないから勉強になった。 どういう形のものであれ、戦争での体験、経験は語り継いでいかないといけないと思う。2020/12/06