内容説明
この書物が常にひろく読まれて来たのは、人間の生き方についての知恵を、広汎に縦横に与えるという魅力のためである―。孔子とその弟子の言行を記録した対話篇、論語。そこには、教養や学び、友情、道徳、政治、国家といった普遍的な主題をめぐる思考が刻み込まれている。中国における古今の注釈書だけでなく、日本の江戸時代における伊藤仁斎や荻生徂徠らの解釈を比較検討。中国古典研究の碩学が口述によって全章を解説する。
目次
学而第一
為政第二
八〓第三
里仁第四
公冶長第五
雍也第六
述而第七
泰伯第八
子罕第九
郷党第十
著者等紹介
吉川幸次郎[ヨシカワコウジロウ]
1904年、神戸市生まれ。京都帝国大学で清朝考証学を学んだのち、北京大学に留学。帰国後は東方文化学院京都研究所員を経て、47年より京都大学教授を務める。戦後日本における中国文学研究の転換に寄与し、64年に芸術院会員、69年に文化功労者に選出された。80年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆうきなかもと
7
編集は雑だが、内容は深い。読みやすくもないが、面白い。論語初心者には勧めない。2023/05/10
mikio
6
子曰く、之れを知る者は之れを好む者に如かず。之れを好む者は之れを楽しむ者に如かず。(雍也第六)2021/10/24
式
1
伝統的な諸説を名前と共に紹介した上で従うべきを選び、著者の感想も添えて丁寧に解説するスタイル。仁斎徂徠の説も賛否を表明しつつよく引用し、述而から泰伯にかけては1906年に新たに出土した鄭玄の注を盛んに引く。礼記や春秋を参考に付している点は最近では珍しいと思う。時々挟む余談もハイレベルで面白い。修辞上の関連性も載せているのも示唆に富む。郷党篇は字句が難解で解説もそれに尽きるのでほぼ飛ばした。岩波文庫版に書き込みまくった。2021/09/21
HEZPOZ
0
論語ほど訳者によって色味が変わる本もなかなかないだろう。というのも、あまりに読み手の背景に作用してくる。なので訳者次第では、ものすごいエグミが出る。岩波文庫の金谷訳が支持されているのはそのエグミが少ないからだと思う。そしてこの吉川訳……というより解説は、可能な限りエグみを廃し、詳細を語るものになっている。上下巻の分厚さにたじろがない方であれば、論語の初読にはこちらをおすすめしたい。