朝日文庫
魂込め(まぶいぐみ)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 218p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784022643018
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

戦争で焼かれた村の海辺で、アーマン(オカヤドカリ)に棲みつかれた肉体を離れて海をみつめる男の魂に「帰れ」と訴えかける女の声は届くのか…。現在と過去が交錯する沖縄の風景から甦る戦争の記憶。表題作「魂込め」を含む6編を収録した沖縄文学の新たな担い手による、芥川賞受賞後初の短篇集。

著者等紹介

目取真俊[メドルマシュン]
1960年沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業。83年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞、86年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞を受賞。97年「水滴」が第27回九州芸術祭文学賞ののち、第117回芥川賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

40
【沖縄65】「水滴」で芥川賞受賞後の2年間に書かれた短編を中心に6編。短編集は得てして同じことの繰り返しや、玉石混交の場合があるが、これは多彩でかつ粒ぞろいだ。沖縄らしい作家ではなく、沖縄を根拠地にした世界文学の傑作と言ってしまいたくなる。そう沖縄は中世からグローバルな国だったのだ。例えば「ブラジルおじいの酒」は、沖縄からのブラジル移民の話だ(沖縄からの海外移民は極めて多い)。ラテンアメリカ文学を彷彿とさせるマジックリアリズムが展開される。米軍占領時代の少年同士の鮮烈な性を描いた「赤い椰子の葉」、↓2022/02/02

ハチアカデミー

23
A 目取真俊は、中上健次の不在を埋めるだけの力を持った作家であることが十二分に伝わる傑作短編集。死にかけの男の魂を呼び戻すウタの悲哀を描く「魂込め」では、男の口にアーマン(ヤドカリ)が住み込み、名作「水滴」に劣らぬマジック・リアリズムを堪能できるが、リアリズムに重きを置いた「ブラジルおじいの酒」「赤い椰子の葉」「軍鶏」の三編は哀愁というより、後味の悪さを残す。強烈な悪意と毒をはらむ傑作である。そしてなにより、女が語り続ける「面影と連れて」が凄い。沖縄という場所がはらむ怒りが、小説作品に昇華されている。2012/12/17

ネムル

13
軽々しくマジック・リアリズムという言葉を使いたくはないが、今の日本でそう呼んでもよい唯一の作家なのではないだろうか。その語りの力はなんの気負いもなくさらりとフラットで、また一方で精緻に世界を描写する。また、ぎりぎり踏み込みすぎない節度を保って、沖縄の怒りを潜ませる。特に語り部としての側面が一番強くでた「面影と連れて」、中上健次を沖縄で更新するような「軍鶏」、ナボコフ、ツジハラらに続き蝶文学にハズレのないことを証明する「ブラジルおじいの酒」が特に素晴らしい。傑作。2017/02/08

1139taphilcu3

8
目取真俊は色の表現が上手いと思う。山原の亜熱帯雨林の濃く瑞々しい緑の中に小さく混じる、赤や黄色など様々な原色に近い色。そういうものが頭の中でビビットに再生される。装丁もそういう配色になっている。 表題作は、ヤドカリが男の身体に住み着いて出て行かない、ということで、まあそういうことなんでしょう。 それより好きなのは「ブラジルおじいの酒」だった。これもまた老人と少年の話だった。古酒(くーす)は長年置くと花の香りをはなつ。おじいの育てた酒を「水だ」と言って捨てた青年と、甘い香りに誘われてきた蝶たちをみる少年。2021/03/04

belier

3
再読。やはり圧倒された。いわゆるマジックリアリズムを駆使した作品群と言えるのだろう。その本場南米では実はそれがリアリズムなのだと言われるが、この短編集の沖縄にもあてはまると思う。自分は霊とかまったく縁遠く科学を重んずる人間であるが、この小説の中では魂(まぶい)が見える中心人物たちのほうが、世界の真実に触れていると思えるのだ。また、戦争の記憶や生活苦の描写は迫真的で戦慄を覚える。日本語でマジックという言葉はなにか軽く、目取真俊の作品には相応しくない気がする。これは沖縄のリアルを描き出した短編集だと言いたい。2022/07/26

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