内容説明
日本人の心情を描きだした静謐な映像美で、世界に類を見ない芸術を創造した小津安二郎。その全作品をあらゆる角度から分析、詳細なデータも収録した「完本」版小津論。「東京の合唱」「生れてはみたけれど」など初期作品から「麦秋」「東京物語」「秋刀魚の味」など代表作まで、その全魅力を探る。
目次
私の見た小津安二郎
小津作品のスタイル
生いたち
修業時代
初期の作品
アメリカ映画の影響
批判的リアリズムの完成
“喜八もの”の世界
崩壊の感覚
崩壊への抵抗
戦争体験
戦後―苦痛の風景
至福のイメージ
アイロニー
老年
その死と小さな総括
増補
資料
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
津和蕗 きりあ
2
小津安二郎監督の作品の時代背景と、ひとつ、ひとつの作品に対する思いの垣間見える本です。
柴多知彦@cinema365
0
元本の初版は71年なので小津が没した63年から十年たらずで執筆されている点にまず留意。小津をリアルタイムで見た世代ならではの皮膚感覚は何より貴重。まず小津作品に共通する独自の技法について100Pを割いて考察、そこから改めて彼の生い立ちを語り、フィルムが現存しない初期作から遺作まで丁寧に解説していく。小津が晩年のガチガチの保守主義にいかにたどり着き、それを反復した意味について著者独自の視点でわかりやすく説明されている好著。言及されているわけではないが、個人的にはホン・サンスや初期アン・リーへの連想が膨らんだ2016/03/13