内容説明
「徳利を下げたおどけ者」、「人を襲う狂暴なけもの」。―古代からさまざまな姿で日本人とかかわってきた動物の形と意味のコスモロジー。
目次
第1章 タヌキ昔話の形成
第2章 神仏への愛憎
第3章 信楽焼定型タヌキのルーツ
第4章 心理現象としてのタヌキ
第5章 狸の意味
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
3
稲荷信仰と結びついた狐とは対照的に、あくまで妖怪であり続けた狸。そこには、猿のような戯性、猫のような凶性、猪のような愚性が混じっている。これをそれぞれ、幼児、青年、老人の悪い部分として妖怪に仮託したという考えは興味深かった。大陰嚢や大きな腹についての考察は流石にこじつけのような気もしたが、様々な文献からの引用があり狸に関しての知識がかなり増えた。2015/06/21
けん
2
まだ読み終わってない関連書がいくつかあるので、後で書き直すかもしれないけど、一旦読了したので書き留めておく。本書は本来、生物学者であり、科学史の専門家でもある中村先生が、その興味の向かう先を動物のイメージに移し、精力的に研究活動を行う中で動物というより民俗学的な「たぬき/狸」の歴史的な変遷についてまとめられた一冊。主に文献に現れた狸に関する伝承記述と、それに類似した他の動物類の記述を比較検討しながら、各時代のそのイメージを探っていくという科学史の専門家らしい方法が採られており、他に類例のない研究になってい2020/01/18
印度 洋一郎
2
動物のタヌキではなく、色んな姿に化けたり、人を化かしたりする、妖かしの存在としての"たぬき"に着目し、日本人にとって、この獣は一体どういう存在なのかを膨大な参考文献を元に考察。中国ではヤマネコの類だった「狸=読み方も一定しない」が、日本では中型哺乳類(イタチ、キツネ、タヌキなど)の総称になり、伝承・説話でも様々な妖術を使う山の神の化身、後に妖かしの獣となっていったらしい。八畳敷の陰嚢、腹鼓といったユーモラスな要素、信楽焼の形態に隠された暗喩と幅広くタヌキ文化を網羅したガイドブックだ。2011/07/02
スマトラトラ
0
突っ込みどころ満載な一冊でした。まず、筆者がタヌキの生態・行動を理解していない。勿論参考資料はあるけど、限定的かつ古いもので、学術的とは言えないものから引っ張ってきてる。で、その肝心の「たぬきとは?」がまさかの最終章に収録。それまで延々と神と妖怪との関連とかの話がたまーにたぬきを混ぜながら進む。、、、京極堂シリーズ読んでなかったら早々に挫折してたねこれ。 如何に京極夏彦が妖怪の出自を上手く語るかがよく分かったわ。 つかれたわぁ2022/06/26
ジゴンース二世
0
佐渡にいくため、狸の妖怪で有名って事は知ってたから少しでも知識を付けたら観光も楽しめるかなと思い読みました。 狸を中心に妖怪、特に動物系の妖怪をのべてあり、狸のみでなく、狸を通じて妖怪の全体像を把握できた気がします。 各種宗教と妖怪の関係について書いてあるところは、とても面白く、本地垂迹により妖怪となった山の神の件はなるほどーって感じでした。2019/05/10