出版社内容情報
激動の時代とよばれる二〇世紀。それは差別と被差別、支配と被支配の構造が世界を覆い、暴力と戦争にみちた帝国主義の時代であった。アフリカの分割、植民地の拡大、二度の世界大戦、冷戦の激化、独立抵抗運動の広がり。帝国世界の形成から解体まで、「長い二〇世紀」という視角から、現代につながる歴史の大きな流れを描く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
67
2014年刊。タイトルが違う気がする。『帝国主義世界の完成と崩壊』といった内容。グローバル・ヒストリーの流れを意識しているようなあとがきだったけれど、むしろレーニンの帝国主義論的な枠組みから自由になれていない印象。もちろん250ページで「長い20世紀」を語ることに無理は承知だとは思うが、議論が古く感じるところが多い。出てこないのが中ソ対立に多国籍企業。ロストウは出てくるが、世界の史的構造(特に経済)が見えてこず、ひたすら抑圧される民衆とその解放に焦点が当たっている。あとイスラームについても殆ど言及なし。2022/05/18
KAZOO
47
20世紀という世紀だけを見直そうとした好著です。新書でこれだけの内容を書かれているのには感心いたしました。しかも定点観測ということで、3か所(アイルランド・南アフリカ・沖縄)をある時点で観察しているのも新鮮な感じがしました。このような分析方法は、規模が違うのですが、ブローデルの「地中海」を思い出しました。2015/03/04
ちゅんさん
42
難しかった。この本は帝国主義を中心にした視点で20世紀の流れを書いた内容で、読むのに苦労した。初学者にはもっとテーマを絞った興味のある分野を積み重ねていく方がいいのかなぁ、。2021/05/25
ゆう。
34
20世紀の世界史を、支配するー支配される、差別ー被差別構造のなかで捉え、暴力と戦争にみちた帝国主義の時代と捉えて、21世紀につながる歴史的教訓とは何かを考察した内容です。著者の20世紀を帝国主義の時代と捉えることで、二つの大戦などにより帝国主義が大きく崩れ、それまで支配される側にいた人々が国家を作り上げていく過程としてみる見方は独自性があるように思いました。それはソ連・東欧諸国の崩壊にも当てはめて考えられています。帝国主義を乗り越える力がどのような部分にあったのかなど今後も学んでいきたいと思いました。2018/05/08
樋口佳之
33
ダーバン会議と呼ばれる。この会議にも触発されつつ「植民地責任」という概念を練り上げた永原陽子は、植民地主義の責任追及を回避することで成り立ってきた第二次世界大戦後の世界秩序( それは私たちの表現を使えば帝国世界の延長としての「長い二〇世紀」の終盤における世界秩序ということになる) を支えてきた「従来の国際社会の常識」を打ち破ったものとして、各国政府の代表によって奴隷貿易や奴隷制、植民地主義の「罪」が公然と議論されたことを、高く評価/評価されるレビュー多く、ゼミの課題になるのも納得の内容でした。2018/05/21