内容説明
「思わず彼は拾い上げた桜の実を嗅いでみて、おとぎ話の情調を味わった。それを若い日の幸福のしるしというふうに想像してみた」―。藤村(1872‐1943)の文学への情熱、教え子へのかなわぬ恋を投影した青春の自画像。同じく自伝的小説である『春』『新生』の、少年期から青年期を描く。改版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
4
少年期から青年期まで。寂しさの内側には一途な激しさを秘めている。捨吉の鬱屈した心については、それでよしと肯定的に書かれているように感じる。沈み込んだ日々は不幸ではないのだと思う。むしろ、浮わついた明るさから離れ、深く思うことの多い、幸せな時代だったともいえるかもしれない。2023/06/25
本命@ふまにたす
3
島崎藤村の長編。キリスト教における「信仰」の問題が出てきたり、他の文学作品からの引用があったりはするが、基本的には読みやすく感じた。注解もついており、読解の助けになりそう。2022/08/30
ekoeko
1
中学生の時読んだけど内容は忘れたな~と手に取りました。信仰を持っている主人公の成長過程なのでしょうが、学業、奉公、就職、恋、すべてが中途半端に感じるし、旅立ちが解決になるのか疑問。桜の実=主人公、熟する時=成長 ?・・・難解。2018/03/11
今野琢
0
明治20年代に高輪台の学舎に学んでいた主人公岸本捨吉は、年上の繁子との交際に破れ、新しい生活を求めて実社会へ出て行く。しかし、そこで遭遇した勝子との恋愛にも挫折した捨吉は西京への旅に出る――。 作品の行間には少年の日の幸福の象徴である桜の実にも似た甘ずっぱい懐かしさが漂い、同時に恐ろしい程に覚醒した青春の憂鬱が漂う。「春」の序曲をなす、傑れた青春文学である。2023/10/31
Toru Fujitsuka
0
古典を読もうと思い読んでみた 美しい文章と感じた2022/09/02