出版社内容情報
岩波文庫に収録されている約500点の近代日本文学の書目の中から,坊っちゃん,啄木歌集,銀の匙,萩原朔太郎詩集,風の又三郎,夜明け前等30点を選び,それぞれの魅力を語るエッセイと編者による座談会を収める.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tieckP(ティークP)
2
『世界文学のすすめ』の姉妹編。個人的な趣味もあってあちらの方が好きだけれど、こちらも十分、何冊もの本に興味を抱かせてくれた。冒頭の座談会も、日本の外国文学受容における詩の重要性を訴えていて興味深いし、梅原猛や古井由吉、加賀乙彦、松山巌、亀井俊介などそれぞれに期待を裏切らない読み物を寄せている。中野三敏の鴎外『渋江抽斎』論や、中村稔の三好達治論は本を手に取りたくさせるし、阿川弘之の志賀直哉論は弟子の視点から距離を置かずに語ることで、ほかのエッセイから際立っている。近代以外の日本文学エッセイも欲しくなった。2013/05/31
とまと
1
図書館にて。読んだことがある本・読んでいる本と筆者に興味がある章のみ。2012/10/07
壱萬弐仟縁
1
佐藤春夫『田園の憂鬱』を松山巖氏の紹介に注目(209ページ)。「生涯を極貧のなかに過ごしながらも、自分の気質のままに生き、精神の自由を見失うことのなかった貘」の描写に共感した。時代として、大逆事件(明治43年)の閉塞感(213ページ)で憂鬱な人間。現代の格差社会に通じる。合計30作品の一つをご紹介した。他は、加賀乙彦氏の紹介の〈銀の匙〉や(145ページ~)も再度リバイバルしたので、こども時代のイキイキとした表現には懐かしさがある。2012/08/03
ぷほは
0
座談会の後に個々の作品について短い文章が載っているというもの。昔読んだ『教養のためのブックガイド』を思い出させるが、あちらと違って個々の執筆者の思い入れの強さがビシビシ伝わるのが、いかにも近代日本文学らしいというか。門弟の末席にいた人から幼少時代から今までずっと惹かれ続けている人もいれば、全く関わりがないままにふと読みの拘りを覗かせる人まで、そのありようはそれぞれだが、どれも興味深かった。特に自分のような無教養な人間――作品名は知っていても、内容や文体についてはとんと無知な者――にとっては最良の入門書だ。2016/01/02