出版社内容情報
プラグマティズムで知られるアメリカの思想家ウィリアム・ジェイムズ(1842―1910).ジェイムズが晩年に追求した彼なりの体系的な形而上学―「純粋経験の哲学」とは.『多元的宇宙』『根本的経験論』より編訳.
内容説明
プラグマティズムで知られるアメリカの思想家ウィリアム・ジェイムズ(1842‐1910)は、心理学、宗教学、哲学の各領域で多大な影響力をもった。ジェイムズが晩年に追求した彼なりの体系的な形而上学“純粋経験の哲学”の構築を、よりシャープなかたちで跡づけるべく、『多元的宇宙』『根本的経験論』所収の論文を編訳。
目次
第1章 「意識」は存在するのか
第2章 純粋経験の世界
第3章 活動性の経験
第4章 ふたつの精神はいかにしてひとつの物を認識しうるのか
第5章 純粋経験の世界における感情的事実の位置
第6章 変化しつつある実在という考えについて
第7章 経験の連続性
第8章 多元的宇宙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
45
プラグマティズムとは直接経験されるものだけを実在するものとして捉えて、さらには認識される原因のみが本来の原因であるとする考え方です。 また、相手の見ている物と自分が見ている物は同一であるという前提に立っていたり、経験が主観的信念と混ぜ合わさることは絶対者が防ぐことができないとして絶対者の限界を示している点がカントとの相違点でしょうか。 経験は他の経験と混ぜ合うことで元の経験自体が浮き彫りになるというのは面白いですね。理解し切れてないので繰り返し読んでいきたいです。2023/01/28
かわうそ
44
『世界のなかで本当に作用しているといえる力は、長期的な見通しをもったものなのか、それともより盲目的なものなのか。』P121.122と彼は問いかけます。もし、盲目的なものが支配しているとすれば私たちに生まれるのは無力感です。プラグマティックに考えれば、実際的な効果をもたらさない思想に意味はありません。人間に無力感を引き起こす思想を信じるプラグマティストがどこにいますでしょうか??? 『われわれの思想はわれわれの行為を決定し、われわれの行為は世界のこれまでの性格をもう一度決定しなおすのである。』P2092023/06/06
かわうそ
42
再読。プラグマティズムは多様性を認めるもののはず。しかし、現状プラグマティズムという効用や有用性から考える思想が排他性を伴っているのは上澄みのみが切り取られて核心的な部分は捨象されているせいだと思います。つまり、本来一元的な物の見方とプラグマティズムは相容れないはずなのに効用という部分が誇張されずきて自分の価値観を過信し、それに従わない他人を攻撃し出す。プラグマティズムは資本主義と絡み合ってしまってはいけないものだったのではないか。 拝金主義によってプラグマティズムは悪に転化したように思えてならないです。2023/02/02
Bartleby
17
「自分自身の生をよりよく生きることこそが、われわれが諸事物を認識したいと考える真の理由である」。心理学や実用主義などの研究を通して多角的に生の有り様を考察してきたジェイムズの晩年に近い論文集。原初的な純粋経験が分節化・文脈化され我々が普通イメージするような経験となる過程が論じられており、その推移の過程を読者自身がトレースし実感的に理解するのはなかなか難しくはあるものの、これまでの彼の研究成果がさらに深められ、ひとつの形へ結晶化したような議論は非常に興味深く刺激的。2015/10/26
buuupuuu
16
心と物は同じ素材からできており、異なる文脈の中で、この素材が心や物としての身分を獲得していくのだとする。この素材を純粋経験と呼んでいる。感情的事実や価値、二次性質などを、私たちは対象の性質としたり心の性質としたりする。この両義性はそれらが属する文脈の曖昧さによって説明される。古典的な経験論は経験を原子から成るものと考えるが、ジェイムズは関係もまた経験に含まれるとする。これはゲシュタルトのようなものだろう。活動性もまた経験に含まれるとし、還元的ではない仕方で全体と諸部分の活動性の関係を問うべきだとしている。2024/03/18