出版社内容情報
明治四四年から敗戦直後まで,『東洋経済新報』において健筆を揮った石橋湛山(一八八四―一九七三)の評論は,普選問題,ロシア革命,三・一運動,満州事変等についての論評どれをとっても,日本にほとんど比類のない自由主義の論調に貫かれており,非武装・非侵略という日本国憲法の精神を先取していた稀有なもの.三九篇を精選.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
逆丸カツハ
30
第一次大戦と第二次大戦のあいだにあって、小日本主義を唱えた慧眼は素晴らしいと思った。特に、それが道徳的な立場からのみ主張されたのではなく、現実的な立ち位置と他国の道義を問えるようなものを目指した、怜悧な利益についての計算をも有していたことに好感する。利益を完全に排した道徳は持続しないか、それ自体が悲劇を生む可能性があると思うから。とはいっても、小日本主義の道に歴史は進まなかったが…。それでもなお現実を見据えた理想を目指していて、素晴らしいと思った。2024/02/23
アミアンの和約
21
東洋経済新報記者にして後に総理大臣にもなる石橋湛山の評論集。彼の主張である自由貿易主義、個人主義に基づいた国民主権がよく表れている。令和の今でも治っていない自治体の中央政府による補助金依存体質に関しても言及があったり今日でも通用する内容も多い。惜しむらくは戦後の評論が自民党の広報誌のようで面白くないところだろうか。マスコミ人は政治家になってはいけないということか。2023/09/22
masabi
14
【概要】1912-1968までのジャーナリスト石橋湛山の政治評論集。【感想】自由主義、小日本主義、軍縮、中ソとの国交交渉と時代は変わっても主張すべきことは主張する。植民地の放棄や軍縮が不可避ならば率先して行い、欧米に対して道義的に優越した地位を目指すほうが良い。植民地が国防上の災禍を持ち込む。これらの小日本主義の主張は戦果に湧く軍部にも国民にも耳が痛い。中国にしてもロシア革命にしてもナショナリズムの勃興を当然のものとして干渉を戒めるなど他国民に対しても目線を同じくしている。2022/03/26
勝浩1958
10
あの時代にあって、これだけリベラルな発言を続けることには、相当の覚悟と勇気がなければできるものではなかったであろう。いまの政治家の言動を見ていると、”付和雷同”か、とにかく何が何でも"けなす”かの態度が目立ちます。自分の考え、信念を貫き行動する為政者のなんと数少ないことか。そんな中で、翁長知事の言動は(難しいことは勉強不足であまり分からないのですが)、首尾一貫しているように思います。 2015/11/12
isao_key
9
自由主義を標榜した優れたジャーナリスト、政治家であった石橋湛山らしさが発揮された政治論を中心に編まれた本。アジアへの領土拡張には早くから反対を唱え、日本の弱点について、小欲にとらわれ、志が小さいことであると喝破している。また女性の積極的な社会進出を大正13年(1924)に説いている。この中では市町村での学務委員や生徒保護者会については女性を活用すべきだと述べる。この論説が出された時には、日本ではまだ普通選挙が行われておらず(1925年から実施)女性の参政権の獲得は1945年まで待たなければならなかった。2014/06/03