出版社内容情報
寛政の改革で引き締められていた風俗が崩れて,絢爛たる化政文化が起ころうとする十一代将軍徳川家斉の時代に,武士をはじめ社会の諸階級の内部矛盾・弊害を身分別に記すとともに,それに対する政策として富の平均化と風俗の匡正を提言した書.中下層身分の状況を詳述した風俗随筆であるのみならず,卓抜な政論としても知られる.
内容説明
寛政の改革で引きしめられていた風俗が崩れて、絢爛たる化政文化が起ころうとする十一代将軍徳川家斉の時代に、武士をはじめ社会の諸階級の内部矛盾・弊害を身分別に記すとともに、それに対する政策として富の平均化と風俗の匡正を提言した書。中下層身分の状況を詳述した風俗随筆であるのみならず、卓抜な政論としても知られる。
目次
武士の事
百姓の事
寺社人の事
医業の事
陰陽道の事
盲人の事
公事訴訟の事
諸町人の事
諸町人中辺以下の事
遊里売女の事
歌舞伎芝居の事
穢多・非人の事
米穀・雑穀そのほか諸産物の事
山林の事
日本神国といふ事
非命に死せる者の事
土民君の事
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
feodor
7
寛政の改革以後に書かれた、というのだけれども、商品経済の中で頽廃していく江戸町人社会と、それに対して崩れた倫理観を感じる農村社会の価値観との対峙、というようにも思われる見聞録。町人に対して、そのためえらく厳しい。ただ、とはいってどの階層に対しても筆誅は加えられている感じもあるのだけれども。いつの時代も「世も末だ」という感覚というのはあるのだろうけれども、世事見聞録はその「世も末」を微に入り細に入り書いたがため、江戸時代の風俗を伝えるものとなったのかな…。2010/12/13
あんどうれおん
2
風変わりなペンネーム以外、何の情報も後世に伝わっていない人物による文化13年当時の世評。200年以上前の文章ということになるはずですが、社会のあらゆる階層を取り上げつつ、その所作振る舞いを幅広く斬りまくる姿勢に意表を突かれました。一方、ちょっと家康の治世を持ち上げすぎな印象もあります。それが著者なりの処世術だったのかもしれません。2022/04/11
正坊
0
江戸は文化年間、頭の固いご隠居(幕臣かな?)が書いた社会評論。侍が軟弱になっているとか、大商人の贅沢のせいで貧富の差が広がるとか、やたら槍玉にあげているのが面白い。宗教では本願寺宗を信徒からカネを巻き上げてばかりいると非難しているのがちょっと意外。それでも、小百姓や遊女にはかなり同情的です。もちろん、今のような経済に関する感覚・知識なんてのはないので、幕府の草創期(「国初め」と言っている)を理想のように語っているのがイタい。「都会」という言葉が今と同じ意味で使われているのはちょっとした発見でした。 2020/05/29